フリーメール

2004年10月25日
メールが来ていた。

サイトから送られてくるお誘いのメールではない。

ちゃっと

2004年10月23日
眠れなくて、また例のサイトにアクセスした。


単なる「彼女」

2004年10月21日
「今週は帰れない」

彼はそう言った。

わかってる。
毎週帰ってくるのは無理だ。
遠すぎる。
わかってる。

私はものわかりの良い彼女を演じる。

わざとらしく拗ねてみせるが、本当の気持ちは言わない。

仕事のことで口を出すのは良くない。
そんなことしていい立場じゃない。
私は単なる「彼女」でしかないのだから。

寂しいから帰ってきてよ。
そばにいてくれないと嫌なの。

そんなことは言わない。

次に会うのは、11月になるだろう。
 
 
サイトから大量に送られてくるメールを、
また、ひとつひとつ見ながら削除していった。

こおり

2004年10月18日
彼に会った翌日は、
いつもよりずっと寂しさを感じる。

あなたの腕のぬくもりでほんの少しだけとけた寂しさの氷は、
あなたが離れて行ってしまうと、
もっともっと大きくなる。

氷をすべてとかしてしまえるくらい、
もっと近くにいてください。

そして、ずっと抱いていてください。

束の間

2004年10月17日
久しぶりに彼氏と会った。

彼は仕事の都合で九州に住んでいる。
交際期間は一年くらいになる。
出逢ったのは東京だけれど、
付き合い始めて半年もたたないうちに転勤が決まってしまった。
それから半年以上、遠距離を続けている。

今回は金曜日の深夜に戻ってきていたが、
土曜日は友達と出かけていたらしい。

うちにやって来た彼は、数週間ぶりに会った私を抱きしめるのではなく、
くしゃくしゃと頭をなでた。

また子供扱い。

私は少し拗ねてみせる。
いつものやりとり。
だから、彼もいつものように笑った。

彼は五つ年上。
私が感じるよりも年齢差を感じることが多いという。

離れて暮らしているせいもあるだろうが、衝突することはほとんどない。
彼は、めったに怒らない人だ。
少なくとも、声を荒げて怒鳴りつける姿を見たことはない。

「子供相手に怒ったりしないよ」

冗談めかしてそんなことを言ったりする。

「たった五歳の差でしょ?」

私は反論するが、やはり彼は笑うだけだ。
 
 
子供……ね。

そうなのだろうか。
離れていることがどうしようもなく寂しく感じるのは、
私が子供だからなのだろうか。
月に良くて数回、下手をすると一度も会えないような生活を不満に思うのは、
私が幼いせいなのだろうか。
仕事中に電話やメールができないことくらい分かっているけれど、
それでも声が聞きたい、返事が欲しいと思うのは、
幼さゆえの我侭なのだろうか。

そうかもしれない。

でも、寂しさを我慢してやっと会えたその時には、
ぎゅっと抱きしめて欲しい。

頭をなでるのでなはく、すぐに抱きしめて欲しい。

腕のかたさや胸のぬくもり、ほのかな香水の匂いを、
誰よりも近くで感じていたい。

もっとそばにいたい。ずっとそばにいてほしい。

そう思うのも、私が子供だから?
 
 
横に座る彼の頬にキスをした。
彼はやっと私を抱きしめてくれた。
私の頬をなで、髪をそっとかきあげてくれた。
キスをした。
そして、寝た。

あなたは、こうやって私を抱いている時も、
子供だと思っているの?

彼は何も言わず、深い深いキスをした。

熱い指が、私の身体を這った。

寂しさの氷が、ほんの少しだけとけた。
 
 
 
束の間のぬくもり。

彼はまた、遠くへと離れていった。

メール

2004年10月16日
大量のメールが届くようになった。
例のサイトからのお誘いのメールだ。
サイトにはアクセスしていなかったが、登録を削除していなかったせいだ。

自分を飾り立て、アピールしようとする言葉の羅列。
まるで見たかのように私のことを褒めたて、おだてている。
紳士を装い、害のなさをアピールしながらも、下心は隠さない。

滑稽だった。

私は、メールをひとつひとつ見ながら削除していった。

まだしばらく、登録を削除しないでおこうと思った。

はじまりというもの

2004年10月14日
多分、そこにたどり着いたのは眠れなかったせい。
東京では完全な静寂など望めない。
星も月も、闇そのものがうす紅い光を孕んでいる。
けれど、それでもシンとした夜の中で、私はまた、眠れずにいた。
 
寝付けないことには慣れた。
それでも、誰もいない部屋でじっとしていることへの
不安と焦りのようなものには、まだ慣れない。
話す相手も温もりも遠い。

眠くなるのを待とうと、パソコンをたちあげた。
あてもなくネットの上を飛び回って、
ふと、あるサイトにたどり着いた。

いわゆる出会い系サイト。

そのサイトにはチャット部屋があった。
暇つぶし代わりに話す相手が欲しくて、
そして、半分は冷やかしのつもりで登録した。

チャットは、男性と女性が一対一で話す形式になっていた。
私はチャット部屋に入った。

待ち構えていた男性から声がかかった。
私も、軽いトーンで返事をした。

男は、自己紹介もそこそこに、私に質問を浴びせてきた。

名前は? 年齢は? 出身は? 身長は? 体重は? スリーサイズは?

私は嘘を交えながら答えた。
事実に沿っているのは、年齢と身長くらいのものだ。
正直に答える必要などないと思った。
それでも、22歳という年齢を、男は喜んだようだった。
社交辞令程度に質問を返してみたが返事はうやむやで、
お返しにまた質問の雨。

容姿は? 髪型は? サイトに登録した目的は?

目的は、暇つぶし。
そう言った。
冷たく言ったつもりだったが、むしろ男はくいついてきた。

質問は、すぐに欲情をむき出しにしたものへと変わっていった。

私は、やはり嘘ばかりを答えた。
それでも男は嬉々として、答えのひとつひとつに反応していた。

……くだらない。

くだらないやりとり。
うんざりした。

話の途中で、私はログアウトした。

時計を見た。
時間は経っていたが、少しも眠くはなっていなかった。

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