遠距離不倫
2005年3月1日今日、Mは休みだったのだけれど、奥様には仕事だと言ったらしい。
スーツ姿だった。
朝から会って、夜まで一緒に居られる。
今日で、最後だ。
午前中は、私の希望する場所に行った。
ちょっとした約束で、付き合ってもらう事になっていたのだ。
でも、その後の予定は何も決まってなかった。
少なくとも、私は何も聞いてなかった。
「実は今日、ホテルを予約してる」
昼食を食べている時に、Mが言った。
「ホテル? ……って予約できるの?」
ラブホテルのことだと勘違いした私は、わけの分からないことを言ってた。
でも、実際はちゃんとしたシティホテルだった。
まさか予約をとっていると思ってなかったので、私はすごく驚いた。
きちんと正装したホテルマンが、顔の見える位置にいる。
チェックインしている時、妙に緊張した。
部屋から見える街の景色もなんだか新鮮に見えた。
風景を眺めるのが好きだから、全然飽きなくて、
「あっちが●●で、こっちが××だねぇ」って、
分かりきったことを言いあいながら、しばらく外を眺めていた。
「夜になったら、綺麗だろうね」
私はそれだけではしゃいでしまう。
子供っぽいとは思うけれど。
ベッドに座っていたMに呼ばれ、手をひかれて、隣に座った。
初めて会った日も、こうやって手をひかれたんだった。
今は、あの時ほどの緊張も不安もない。
腰を抱く腕や、息がかかるくらいに近くにいることを嬉しいと思うだけ。
罪悪感よりも、その気持ちの方が大きい。
肩に頭を預けて、Mの顔を見た。
まつ毛、長いなあ……。改めて思った。
キスをした。
きつく抱きしめられて、私も強く抱きしめかえした。
ベッドに倒れこんで、Mが私の上着をはいで、身体中にキスをした。
のどにも、肩にも、胸元にも。
ニットのキャミソールの上を、Mの手が這っていた。
「だめだ……やっぱり止まらなくなった」
「……ん?」
Mは、私の手をとって自分のを触らせた。
スーツの上からもわかるくらい、かたく大きくなってた。
「わかりやすい」私はちょっと笑った。
愛撫が激しくなって、気がつけば服を脱がされてた。
唇が乳房を吸って、だんだん下がって行くのを感じた。
声が漏れた。
ドキドキしてきた。
初めて手に触れた時みたいに。
Mは、私の弱いところを知っていて、いつも指で攻める。
「だめ」って言っても、大きな声で喘いでも、
唇でふさがれ、私がイクまでやめない。
私も、弄るようにMのを触ってた。
攻められて攻められて、くたっとした私に更に意地悪するみたいに、
Mは自分のを入れる。
私の身体は、力が抜けていたはずなのに、また反応してる。
声をあげて、身体をのけぞらせて、それでもMを求めてる自分がいる。
もっと奥に、もっと……って思ってる自分がいる。
その日、何度目のセックスだっただろう。
「好きだよ」
Mが言った。
私の好きな、うっとりとした顔で。
「好き?」
「ん……」
むさぼるように、キスをした。
「好き……」って言った。
Mの身体にたくさんキスをした。
そして、Mのを、口に含んだ。
優しく優しく、包んであげたいと思った。
タイムリミットは、終電までで。
十分すぎる時間なのだろうけれど、やっぱり短く感じて。
時計を見ると、終電が迫っていた。
いっそ私もこのまま眠って、気づかなかったフリをしようか。
そう思った。
そんなこと、できなかったけれど。
最後に、ゆっくり過ごせてよかったな、って思った。
これで終わりになっても、「良い思い出」にできるかもしれない。
眠っているM。
私は、Mに後ろから抱きしめられて。
Mの左手が、ぽん、ぽん、と子供をあやすようにリズムを刻んでた。
無意識だろうか。
奥様と抱き合って眠っている時にも、
こうやってリズムを刻んでるんだろうか。
ぼんやりと考えた。
「…夢見てた」
目覚めたMが言った。
「すごくリアルな夢だったよ。
白い天井の部屋に居て、
こんな風にyucoと裸で抱き合って、寝て、話してた。
『5月は忙しいから…とか』」
「次の相談?」
「次の次かも?」
「じゃあ、居るのは私の新居?」
「そうかも」
「…『次』なんてあるのかなあ」
「あるよ」
「ホントに?」
「絶対」
Mは言う。
『ゼッタイ』だと。
『絶対』なんてありえない。
離れれば疎遠になり、きっとメールの頻度も減っていくはずだ。
そして、いつかはきっと『オワリ』がくる。
そんなこと、わかりきってる。
でも、理屈とは別に、Mにもっと会いたいと思う。
「Mの夢が正夢になればいいのに」
そう思っている自分が居る。
別れる駅で、いつもと同じばいばいのキス。
ほんの少し、いつもより深いキスだった。
スーツ姿だった。
朝から会って、夜まで一緒に居られる。
今日で、最後だ。
午前中は、私の希望する場所に行った。
ちょっとした約束で、付き合ってもらう事になっていたのだ。
でも、その後の予定は何も決まってなかった。
少なくとも、私は何も聞いてなかった。
「実は今日、ホテルを予約してる」
昼食を食べている時に、Mが言った。
「ホテル? ……って予約できるの?」
ラブホテルのことだと勘違いした私は、わけの分からないことを言ってた。
でも、実際はちゃんとしたシティホテルだった。
まさか予約をとっていると思ってなかったので、私はすごく驚いた。
きちんと正装したホテルマンが、顔の見える位置にいる。
チェックインしている時、妙に緊張した。
部屋から見える街の景色もなんだか新鮮に見えた。
風景を眺めるのが好きだから、全然飽きなくて、
「あっちが●●で、こっちが××だねぇ」って、
分かりきったことを言いあいながら、しばらく外を眺めていた。
「夜になったら、綺麗だろうね」
私はそれだけではしゃいでしまう。
子供っぽいとは思うけれど。
ベッドに座っていたMに呼ばれ、手をひかれて、隣に座った。
初めて会った日も、こうやって手をひかれたんだった。
今は、あの時ほどの緊張も不安もない。
腰を抱く腕や、息がかかるくらいに近くにいることを嬉しいと思うだけ。
罪悪感よりも、その気持ちの方が大きい。
肩に頭を預けて、Mの顔を見た。
まつ毛、長いなあ……。改めて思った。
キスをした。
きつく抱きしめられて、私も強く抱きしめかえした。
ベッドに倒れこんで、Mが私の上着をはいで、身体中にキスをした。
のどにも、肩にも、胸元にも。
ニットのキャミソールの上を、Mの手が這っていた。
「だめだ……やっぱり止まらなくなった」
「……ん?」
Mは、私の手をとって自分のを触らせた。
スーツの上からもわかるくらい、かたく大きくなってた。
「わかりやすい」私はちょっと笑った。
愛撫が激しくなって、気がつけば服を脱がされてた。
唇が乳房を吸って、だんだん下がって行くのを感じた。
声が漏れた。
ドキドキしてきた。
初めて手に触れた時みたいに。
Mは、私の弱いところを知っていて、いつも指で攻める。
「だめ」って言っても、大きな声で喘いでも、
唇でふさがれ、私がイクまでやめない。
私も、弄るようにMのを触ってた。
攻められて攻められて、くたっとした私に更に意地悪するみたいに、
Mは自分のを入れる。
私の身体は、力が抜けていたはずなのに、また反応してる。
声をあげて、身体をのけぞらせて、それでもMを求めてる自分がいる。
もっと奥に、もっと……って思ってる自分がいる。
その日、何度目のセックスだっただろう。
「好きだよ」
Mが言った。
私の好きな、うっとりとした顔で。
「好き?」
「ん……」
むさぼるように、キスをした。
「好き……」って言った。
Mの身体にたくさんキスをした。
そして、Mのを、口に含んだ。
優しく優しく、包んであげたいと思った。
タイムリミットは、終電までで。
十分すぎる時間なのだろうけれど、やっぱり短く感じて。
時計を見ると、終電が迫っていた。
いっそ私もこのまま眠って、気づかなかったフリをしようか。
そう思った。
そんなこと、できなかったけれど。
最後に、ゆっくり過ごせてよかったな、って思った。
これで終わりになっても、「良い思い出」にできるかもしれない。
眠っているM。
私は、Mに後ろから抱きしめられて。
Mの左手が、ぽん、ぽん、と子供をあやすようにリズムを刻んでた。
無意識だろうか。
奥様と抱き合って眠っている時にも、
こうやってリズムを刻んでるんだろうか。
ぼんやりと考えた。
「…夢見てた」
目覚めたMが言った。
「すごくリアルな夢だったよ。
白い天井の部屋に居て、
こんな風にyucoと裸で抱き合って、寝て、話してた。
『5月は忙しいから…とか』」
「次の相談?」
「次の次かも?」
「じゃあ、居るのは私の新居?」
「そうかも」
「…『次』なんてあるのかなあ」
「あるよ」
「ホントに?」
「絶対」
Mは言う。
『ゼッタイ』だと。
『絶対』なんてありえない。
離れれば疎遠になり、きっとメールの頻度も減っていくはずだ。
そして、いつかはきっと『オワリ』がくる。
そんなこと、わかりきってる。
でも、理屈とは別に、Mにもっと会いたいと思う。
「Mの夢が正夢になればいいのに」
そう思っている自分が居る。
別れる駅で、いつもと同じばいばいのキス。
ほんの少し、いつもより深いキスだった。
憎んではいない
2005年2月27日Iのことを思い出したのは、友達と電話していてIが登場したからだ。
私の引っ越し先が、Iが仮面浪人をしていた時に住んでいた場所だからだ。
Iは、今実家に戻っているらしい。
1年仮面浪人した後、実家近くの大学に合格したんだそうだ。
今現在、引越し先の近くにいないのなら、何も問題はない。
わざわざIが私を訪ねて来ることなどないだろうから。
でも、もし何かのきっかけでIと話すことになっても、私は別に動揺しないと思う。
仮にあの出来事の話をされても、
「そんなこともあったっけ」とさらりと言い捨てることができると思う。
忘れることなんてあり得ないが、私にとってはもう完結した出来事。
二度とIに気を許すことはないし、ましてや身体を許すことはありえない。
でも、憎んではいないだろうと思う。
憎しみの対象となるほど、Iに心のスペースをさくつもりはない。
私が友達とずっと友達関係を続け、Iもその友達と友達関係を続けてゆくかぎり、互いの噂はちょくちょく耳に入ってくるはず。
私は何も思わず、それを聞くだけ。
「ふーん」と適当な相槌をうつだけ。
私の引っ越し先が、Iが仮面浪人をしていた時に住んでいた場所だからだ。
Iは、今実家に戻っているらしい。
1年仮面浪人した後、実家近くの大学に合格したんだそうだ。
今現在、引越し先の近くにいないのなら、何も問題はない。
わざわざIが私を訪ねて来ることなどないだろうから。
でも、もし何かのきっかけでIと話すことになっても、私は別に動揺しないと思う。
仮にあの出来事の話をされても、
「そんなこともあったっけ」とさらりと言い捨てることができると思う。
忘れることなんてあり得ないが、私にとってはもう完結した出来事。
二度とIに気を許すことはないし、ましてや身体を許すことはありえない。
でも、憎んではいないだろうと思う。
憎しみの対象となるほど、Iに心のスペースをさくつもりはない。
私が友達とずっと友達関係を続け、Iもその友達と友達関係を続けてゆくかぎり、互いの噂はちょくちょく耳に入ってくるはず。
私は何も思わず、それを聞くだけ。
「ふーん」と適当な相槌をうつだけ。
昔の話……犯された時のこと
2005年2月25日※アルコールに任せてのなぐり書きです。暗いので、読み飛ばしてください。
初めてセックスをしたのは、高校3年の時だった。
センター模試があった日だったのは記憶してる。
「セックスした」というよりは、犯された。
無理矢理押し倒され、無理矢理彼の『ソレ』をねじこまれたんだった。
当時、私には付き合っている男の子がいた。
同じ高校の、隣のクラスの子だった。
友達のクラスメイト。その程度の存在だった。
進学校だった高校には、希望者には放課後に補習をしていて、私とカレIは、補習で同じクラスになった。私はIが友達のクラスメイトだとは知っていたが、直接の交流はなかったので、名前は知らなかった。
或る日の補習のあと、いきなり話し掛けられて、初めて会話をしたんだった。
はじめは、わからない問題を教えてくれ、というありがちな質問からだった。
今思えば分かりやすい近づき方だが、当時の私は「男の子」をもっと純粋な生き物だと思っていたし、勉強を教えてくれと頼まれるのは日常茶飯事だったから、単純に勉強を教えてほしいだけなのだと思っていた。
Iに勉強を教えた後、さっさと帰ろうとした私をIは追いかけてきた。そして、メアドを教えて欲しいといった。
そこからが、Iとの付き合いがはじまった。
実際に「彼氏彼女」の付き合いを始めたのは、少し後だ。
私は、受験の大事な時期に、男の子と付き合う暇なんてないと思っていたのだが、Iの「一緒に勉強すれば互いのためになる」といういい加減な言葉に納得して、付き合い始めたんだった。
今思えば、私はただの無防備な馬鹿だった。
男性というものが、「好き嫌い」に関係なく、女を抱きたいと思う生き物だと思ってなかったから。
Iが、「あの『yuco』を落としたぞ」というメールを、男友達に送っていたと知ったのは、別れた後のことだ。
すべて後になって知ったことだが、私はIとその友達の、あるゲームの対象になっていたらしい。
マンガじゃないんだからさぁ……って、今は思う。
22歳になった今は、「馬鹿な男だったなぁ」ってIを嗤えるだけの余裕ができた。
でも、「勉強」という名目でIの家に遊びに行った日は、そんなこと思えなかった。
当たり前だけど、勉強なんてするはずもなく、Iはキスしてきた。
キスでは私も驚かなかったけれど、抱きしめられ、ベッドに倒された時、私は酷く動揺した。
嫌がる私の手を押さえつけ、むりやり足を広げて、Iはガチガチに硬くなった自分のモノをねじ込んだんだった。
今思えば、たぶんIも初めてだったんだろう。強引でAVチックでお粗末なセックスだった。血の気の多い高校生らしい、と言うべきだろうか。
でも、当時の私はただ痛みと怖いと思う気持ちでいっぱいだった。
両手を片手で押さえ込まれ、もう片方の手で、Iは身体を弄り続けていた。
暴れようとしても、軽く押さえられ、男女の力の違いを改めて感じてゾッとした。
しきりに何かを囁きかけていたのをおぼえているが、何を言っていたのかまったく思い出せない。
快感など覚えるはずもなく。
痛みよりも恐怖に震えた。
必死にもがいて、覆い被さるIから逃れて、私は逃げ出したんだった。
Iのベッドを血で汚したようだったが、よくおぼえていない。
そして、Iの家を離れ、人気のない道端で、嘔吐した。
膣がジンジンと痛かった。
私は顔をぐしゃぐしゃにして泣いた。とにかく怖かった。
でも、そんなことを誰にも言えるはずかなく、私はその後、そのまま塾に行った。
何事もなかったかのように授業を受けて帰り、下着についた血をコッソリ洗っている時に、もう一度吐いた。
男性も、セックスも、怖い物だと思った。
大嫌いだと思った。
あの出来事の後、私は2年間生理がとまった。
あの出来事が原因だったのかどうかわからないが。
Iが友達に「あの『yuco』とやったぞ」というメールを送っていたのかどうか、私は知らない。
送って、友達と嗤いあっていたとしても、私はもはや驚かないだろう。
Iとは、その日以来連絡を拒否している。
何も知らない共通の友人を介して、何度かIから「連絡をとりたい」といわれたが、応じる気にはなれなかった。
むしろ、どんな神経をしているのだろう、とうんざりするばかりだ。
その日から、私の中で「男性」の位置づけが変わったのは確かだ。
一応「付き合って」いたのだから、レイプなどというものとは違うのだろう。
でも、男性と「気持ち」と「性欲」はまったく別物なのだと思った。
性欲を満たすためなら、男は平気で嘘をつく。甘い言葉を吐く。
そう思った。
だから、私は男の人をどこまで信じて良いのか良くわからない。
その後に付き合った男性たちも今の彼氏も、多分Iとは違うと思う。
今の彼氏に至っては、初めて寝た時も、キスですら、ちゃんと私の同意を得てからだった。
でも、やっぱり彼もIと同じ「男性」であるには変わりないのだと思う。
初めてセックスをしたのは、高校3年の時だった。
センター模試があった日だったのは記憶してる。
「セックスした」というよりは、犯された。
無理矢理押し倒され、無理矢理彼の『ソレ』をねじこまれたんだった。
当時、私には付き合っている男の子がいた。
同じ高校の、隣のクラスの子だった。
友達のクラスメイト。その程度の存在だった。
進学校だった高校には、希望者には放課後に補習をしていて、私とカレIは、補習で同じクラスになった。私はIが友達のクラスメイトだとは知っていたが、直接の交流はなかったので、名前は知らなかった。
或る日の補習のあと、いきなり話し掛けられて、初めて会話をしたんだった。
はじめは、わからない問題を教えてくれ、というありがちな質問からだった。
今思えば分かりやすい近づき方だが、当時の私は「男の子」をもっと純粋な生き物だと思っていたし、勉強を教えてくれと頼まれるのは日常茶飯事だったから、単純に勉強を教えてほしいだけなのだと思っていた。
Iに勉強を教えた後、さっさと帰ろうとした私をIは追いかけてきた。そして、メアドを教えて欲しいといった。
そこからが、Iとの付き合いがはじまった。
実際に「彼氏彼女」の付き合いを始めたのは、少し後だ。
私は、受験の大事な時期に、男の子と付き合う暇なんてないと思っていたのだが、Iの「一緒に勉強すれば互いのためになる」といういい加減な言葉に納得して、付き合い始めたんだった。
今思えば、私はただの無防備な馬鹿だった。
男性というものが、「好き嫌い」に関係なく、女を抱きたいと思う生き物だと思ってなかったから。
Iが、「あの『yuco』を落としたぞ」というメールを、男友達に送っていたと知ったのは、別れた後のことだ。
すべて後になって知ったことだが、私はIとその友達の、あるゲームの対象になっていたらしい。
マンガじゃないんだからさぁ……って、今は思う。
22歳になった今は、「馬鹿な男だったなぁ」ってIを嗤えるだけの余裕ができた。
でも、「勉強」という名目でIの家に遊びに行った日は、そんなこと思えなかった。
当たり前だけど、勉強なんてするはずもなく、Iはキスしてきた。
キスでは私も驚かなかったけれど、抱きしめられ、ベッドに倒された時、私は酷く動揺した。
嫌がる私の手を押さえつけ、むりやり足を広げて、Iはガチガチに硬くなった自分のモノをねじ込んだんだった。
今思えば、たぶんIも初めてだったんだろう。強引でAVチックでお粗末なセックスだった。血の気の多い高校生らしい、と言うべきだろうか。
でも、当時の私はただ痛みと怖いと思う気持ちでいっぱいだった。
両手を片手で押さえ込まれ、もう片方の手で、Iは身体を弄り続けていた。
暴れようとしても、軽く押さえられ、男女の力の違いを改めて感じてゾッとした。
しきりに何かを囁きかけていたのをおぼえているが、何を言っていたのかまったく思い出せない。
快感など覚えるはずもなく。
痛みよりも恐怖に震えた。
必死にもがいて、覆い被さるIから逃れて、私は逃げ出したんだった。
Iのベッドを血で汚したようだったが、よくおぼえていない。
そして、Iの家を離れ、人気のない道端で、嘔吐した。
膣がジンジンと痛かった。
私は顔をぐしゃぐしゃにして泣いた。とにかく怖かった。
でも、そんなことを誰にも言えるはずかなく、私はその後、そのまま塾に行った。
何事もなかったかのように授業を受けて帰り、下着についた血をコッソリ洗っている時に、もう一度吐いた。
男性も、セックスも、怖い物だと思った。
大嫌いだと思った。
あの出来事の後、私は2年間生理がとまった。
あの出来事が原因だったのかどうかわからないが。
Iが友達に「あの『yuco』とやったぞ」というメールを送っていたのかどうか、私は知らない。
送って、友達と嗤いあっていたとしても、私はもはや驚かないだろう。
Iとは、その日以来連絡を拒否している。
何も知らない共通の友人を介して、何度かIから「連絡をとりたい」といわれたが、応じる気にはなれなかった。
むしろ、どんな神経をしているのだろう、とうんざりするばかりだ。
その日から、私の中で「男性」の位置づけが変わったのは確かだ。
一応「付き合って」いたのだから、レイプなどというものとは違うのだろう。
でも、男性と「気持ち」と「性欲」はまったく別物なのだと思った。
性欲を満たすためなら、男は平気で嘘をつく。甘い言葉を吐く。
そう思った。
だから、私は男の人をどこまで信じて良いのか良くわからない。
その後に付き合った男性たちも今の彼氏も、多分Iとは違うと思う。
今の彼氏に至っては、初めて寝た時も、キスですら、ちゃんと私の同意を得てからだった。
でも、やっぱり彼もIと同じ「男性」であるには変わりないのだと思う。
抱きしめられたい日?
2005年2月24日「Mなら、代わりはいくらでも見つかるでしょ?
私の代わりなんていくらでもいるんだし」
否定されたくもあり、肯定されたくもあった。
「そんなことない」
Mは否定した。
それが建前なのか本音なのか、私には判断の仕様がない。
『好き』という言葉も『会いに行くよ』という言葉も……。
信じることができれば、私は多分Mのことが好きだと認めていただろう。
でも、実際は信じられない。
言葉の裏にあるであろう本心を考えてしまう。
どんな言葉や行為で示されても、結局は既婚者なんだから。
本当に奥様以外の人を好きになることなんて、きっとありえない。
「最後に戻るところは、やっぱり」って思う。
私がMのことを「好き」って言ったら、Mは陰で嗤っているかもしれない。
都合よく寝られる女を確保できて、喜んでいるのかもしれない。
のめりこまないように、私は胸中でMを悪者にする。
だって、出逢った場所が場所だから。
信じちゃいけない。
近づいちゃいけない。
都合の良い女になんかなりたくない。
どうせ離れるなら、割り切った関係でいた方が、
どちらも傷つかずに済むはずだ。
そう頭で考えていても、心の奥では違うことを感じてる。
店を出るとき、手をつないだ。
Mはいつも半歩前を歩いて、立ち止まるたびに私をとなりに引き寄せる。
背の低い私が見上げているのに気づくと、
ちょっと視線を下げてこっちを見て「ん?」って訊く。
こうやって、手を触れているだけで胸がぎゅうっとなる。
「離れても、本当に会いに行くよ」
Mが言った。
「いいよ。お待ちしてます」
私はあくまで、冗談として言う。
「じゃあ、その時はご希望通り、手料理でもてなしてあげる。
食べたいもの、考えておいてね」
「じゃあ、肉じゃがとか、和食フルコース」
「うわ、定番だなぁ」
笑った。
でも。
来ない人のことは、待たないよ。
エレベーターの中で、キスをした。
軽く唇を重ねて離し、Mは確かめるように私を見た。
そして、もう一度深いキスをした。
わずかに唇を開くと、Mの舌が入ってきた。
Mの手が頭を優しく抱く。
私はどきりとした。
ほんの少し、いつもの香水の匂いがして、
私はMにきつく抱きしめられたい衝動にかられた。
Mに抱きついて、「行きたくないよぉ」って弱音を吐きたくなった。
けれど、我慢した。
つないだ手は温かい。
私の手も、テキーラのせいでいつもより温かいはずだ。
別れる駅では、いつもと同じ、触れるだけの「ばいばい」のキス。
「次は『まったり』しようね」
Mが言った言葉の意味。
ぼんやりと考えて、私の胸はチクリとした。
私の代わりなんていくらでもいるんだし」
否定されたくもあり、肯定されたくもあった。
「そんなことない」
Mは否定した。
それが建前なのか本音なのか、私には判断の仕様がない。
『好き』という言葉も『会いに行くよ』という言葉も……。
信じることができれば、私は多分Mのことが好きだと認めていただろう。
でも、実際は信じられない。
言葉の裏にあるであろう本心を考えてしまう。
どんな言葉や行為で示されても、結局は既婚者なんだから。
本当に奥様以外の人を好きになることなんて、きっとありえない。
「最後に戻るところは、やっぱり」って思う。
私がMのことを「好き」って言ったら、Mは陰で嗤っているかもしれない。
都合よく寝られる女を確保できて、喜んでいるのかもしれない。
のめりこまないように、私は胸中でMを悪者にする。
だって、出逢った場所が場所だから。
信じちゃいけない。
近づいちゃいけない。
都合の良い女になんかなりたくない。
どうせ離れるなら、割り切った関係でいた方が、
どちらも傷つかずに済むはずだ。
そう頭で考えていても、心の奥では違うことを感じてる。
店を出るとき、手をつないだ。
Mはいつも半歩前を歩いて、立ち止まるたびに私をとなりに引き寄せる。
背の低い私が見上げているのに気づくと、
ちょっと視線を下げてこっちを見て「ん?」って訊く。
こうやって、手を触れているだけで胸がぎゅうっとなる。
「離れても、本当に会いに行くよ」
Mが言った。
「いいよ。お待ちしてます」
私はあくまで、冗談として言う。
「じゃあ、その時はご希望通り、手料理でもてなしてあげる。
食べたいもの、考えておいてね」
「じゃあ、肉じゃがとか、和食フルコース」
「うわ、定番だなぁ」
笑った。
でも。
来ない人のことは、待たないよ。
エレベーターの中で、キスをした。
軽く唇を重ねて離し、Mは確かめるように私を見た。
そして、もう一度深いキスをした。
わずかに唇を開くと、Mの舌が入ってきた。
Mの手が頭を優しく抱く。
私はどきりとした。
ほんの少し、いつもの香水の匂いがして、
私はMにきつく抱きしめられたい衝動にかられた。
Mに抱きついて、「行きたくないよぉ」って弱音を吐きたくなった。
けれど、我慢した。
つないだ手は温かい。
私の手も、テキーラのせいでいつもより温かいはずだ。
別れる駅では、いつもと同じ、触れるだけの「ばいばい」のキス。
「次は『まったり』しようね」
Mが言った言葉の意味。
ぼんやりと考えて、私の胸はチクリとした。
抱きしめられたい日?
2005年2月22日1ヶ月ぶりになるだろうか。
Mと会った。
本当なら、今日一日デートをして、それを最後にするつもりだった。
けれど、Mが休みをとれなくなったのと、Mの希望で、
今日は夜だけ会い、もう一度一日デートをすることになった。
いつもの場所で待ち合わせをした。
久々に会ったMは、少し髪が伸びていた。
⇒以下秘密に。
Mと会った。
本当なら、今日一日デートをして、それを最後にするつもりだった。
けれど、Mが休みをとれなくなったのと、Mの希望で、
今日は夜だけ会い、もう一度一日デートをすることになった。
いつもの場所で待ち合わせをした。
久々に会ったMは、少し髪が伸びていた。
⇒以下秘密に。
なみだがこぼれる
2005年2月21日気づいたら、涙がこぼれてた。
白いファーのラグの上に、ぽたぽた落ちた涙は、
雫になってしばらくファーの上にとどまってた。
何のための涙だろう?
全然わからない。
何かが起こったわけでもなく。
誰を想うわけでもなく。
床にぺったりと座り込んで、
嗚咽もなく、
声もなく、
ぽろぽろとこぼれる涙。
もやもやした気持ちが、溢れてしまったのかもしれない。
涙と一緒に、力がじわぁ……と抜けていった。
明日はMと会う約束をしている。
生理中だから、たぶんセックスは無しだ。
きっとMはそんな日のデートは面倒だと思ってるんだろう。
どんな言葉で取り繕っても、結局、目的は寝ることに違いないんだから。
急に会うのがおっくうになった。
白いファーのラグの上に、ぽたぽた落ちた涙は、
雫になってしばらくファーの上にとどまってた。
何のための涙だろう?
全然わからない。
何かが起こったわけでもなく。
誰を想うわけでもなく。
床にぺったりと座り込んで、
嗚咽もなく、
声もなく、
ぽろぽろとこぼれる涙。
もやもやした気持ちが、溢れてしまったのかもしれない。
涙と一緒に、力がじわぁ……と抜けていった。
明日はMと会う約束をしている。
生理中だから、たぶんセックスは無しだ。
きっとMはそんな日のデートは面倒だと思ってるんだろう。
どんな言葉で取り繕っても、結局、目的は寝ることに違いないんだから。
急に会うのがおっくうになった。
愛撫が変わって
2005年2月19日昨日は彼が家に来て、ふたりで料理をした。
コンロが1つしかない狭いキッチンだから、
効率良く……とはいかないけれど、
それでも一緒に料理をするのは楽しいと思う。
ふたりで作るときは、互いが作れる料理をそれぞれに作るので、
メニューはいつも和洋折衷のアンバランス。
炒め物とカクテルは、彼の担当だと決まってる。
ご飯を食べる時には、大抵、テレビかDVDを観ている。
初めて彼が家にきた時から、いつもこうだ。
その時は、ホラー映画を観ながらのご飯だった(笑)
そして、ご飯を食べたあとに、初めて一緒に寝たんだった。
今日もまた、そのパターンで。
片付けを終えて部屋に戻ったら、待っていた彼に抱き上げられ、
ベッドに投げ出された。
彼の愛撫は、ちょっと荒い。
強引な愛撫に対抗して、私は彼をくすぐる。
怒った(?)彼に、胸元にキスマークを2つつけられた。
服を着れば見えない位置だけれど。
『Mと会うまでに、消えるだろうか……』
とっさにそう思い、慌ててその考えを振り払った。
『ヒドイ女だなぁ』
Mよりも荒っぽい愛撫と、Mよりも熱い肌を感じながら、私は目を閉じた。
彼のセックスは、最近少し変わったような気がする。
キスをしたり、舌を這わせたり、指を入れたり……という行為が、
以前よりも長くなった。
私が彼とのセックスであまり濡れなくなったからかもしれない。
誰か他の女性と寝て、別のセックスを覚えたのかもしれない。
理由はよくわからない。
愛撫が長くなったせいか。
生理前で、更にお酒が入っていたせいか。
その日、久々のセックスで、私はちゃんと彼を受け入れることができた。
それだけで、私はホッとしているのだった。
少なくとも今は、彼のことが好き。そう思えた。
でも、こうやって一緒の時間を過ごせるのも、あと少し。
離れたらどうなるのか。
まだよくわからない。
コンロが1つしかない狭いキッチンだから、
効率良く……とはいかないけれど、
それでも一緒に料理をするのは楽しいと思う。
ふたりで作るときは、互いが作れる料理をそれぞれに作るので、
メニューはいつも和洋折衷のアンバランス。
炒め物とカクテルは、彼の担当だと決まってる。
ご飯を食べる時には、大抵、テレビかDVDを観ている。
初めて彼が家にきた時から、いつもこうだ。
その時は、ホラー映画を観ながらのご飯だった(笑)
そして、ご飯を食べたあとに、初めて一緒に寝たんだった。
今日もまた、そのパターンで。
片付けを終えて部屋に戻ったら、待っていた彼に抱き上げられ、
ベッドに投げ出された。
彼の愛撫は、ちょっと荒い。
強引な愛撫に対抗して、私は彼をくすぐる。
怒った(?)彼に、胸元にキスマークを2つつけられた。
服を着れば見えない位置だけれど。
『Mと会うまでに、消えるだろうか……』
とっさにそう思い、慌ててその考えを振り払った。
『ヒドイ女だなぁ』
Mよりも荒っぽい愛撫と、Mよりも熱い肌を感じながら、私は目を閉じた。
彼のセックスは、最近少し変わったような気がする。
キスをしたり、舌を這わせたり、指を入れたり……という行為が、
以前よりも長くなった。
私が彼とのセックスであまり濡れなくなったからかもしれない。
誰か他の女性と寝て、別のセックスを覚えたのかもしれない。
理由はよくわからない。
愛撫が長くなったせいか。
生理前で、更にお酒が入っていたせいか。
その日、久々のセックスで、私はちゃんと彼を受け入れることができた。
それだけで、私はホッとしているのだった。
少なくとも今は、彼のことが好き。そう思えた。
でも、こうやって一緒の時間を過ごせるのも、あと少し。
離れたらどうなるのか。
まだよくわからない。
空を飛んで海をこえる
2005年2月6日明日からは卒業旅行。
初めての海外旅行(笑)
英語は英文科の彼女に、
地理はナビゲートが得意な彼女に任せて、
私はのんびりさせてもらおう。
まったく知らない土地に行って、
飛び交う言葉も、お金も、人の顔も違ってる環境に飛び込むのは、
どんな気持ちなんだろう。
どきどきする。
彼のことも、Mのことも考えない。
いろんな迷いとか悩みとか、そんな面倒なモノにかまってる暇はないはず。
女3人の旅だから、恋愛話は必ず登場するんだろうけれど(笑)
もやもやした気持ちは置いて行こう。
遠出をするにはちょっと重過ぎる荷物だから。
そうすれば、身体が飛行機に乗って空を飛ぶように、
気持ちもかるくなって飛べるかもしれない。
いっぱい遊んで、
いっぱい買い物して、
いっぱい美味しいものを食べて、
いっぱい写真を撮って、
いっぱい話もしよう。
いっぱい楽しもうね。
これは、『思い出に残して良い旅行』だものね。
初めての海外旅行(笑)
英語は英文科の彼女に、
地理はナビゲートが得意な彼女に任せて、
私はのんびりさせてもらおう。
まったく知らない土地に行って、
飛び交う言葉も、お金も、人の顔も違ってる環境に飛び込むのは、
どんな気持ちなんだろう。
どきどきする。
彼のことも、Mのことも考えない。
いろんな迷いとか悩みとか、そんな面倒なモノにかまってる暇はないはず。
女3人の旅だから、恋愛話は必ず登場するんだろうけれど(笑)
もやもやした気持ちは置いて行こう。
遠出をするにはちょっと重過ぎる荷物だから。
そうすれば、身体が飛行機に乗って空を飛ぶように、
気持ちもかるくなって飛べるかもしれない。
いっぱい遊んで、
いっぱい買い物して、
いっぱい美味しいものを食べて、
いっぱい写真を撮って、
いっぱい話もしよう。
いっぱい楽しもうね。
これは、『思い出に残して良い旅行』だものね。
また遠距離になっちゃうね
2005年2月6日「また、遠距離になっちゃうんだな」
「そうだね」
「半年毎に、近くなったり遠くなったり」
「ホントだ」
「じゃあ、半年後にはyucoが帰ってくるのかな」
「違うよ、あなたがこっちへ来るんだよ」
「寂しくなるな」
「そう?」
「yucoは平気?」
「平気じゃなくても、我慢するしかないでしょ」
「強いな。俺は我慢できないかも」
「嘘つき。九州に行った時、平気だったじゃん」
「平気じゃなかったよ」
「ホントかなぁ」
「yucoの方が平気そうだった。強いな」
「……強くなんかないよ」
本当に強かったら、Mと会うこともなかったんだろう。
あなたの知らないところでつくった、寂しさのはけ口。
「寂しかったら、新しい彼女をつくれば良いんじゃない?
いつも近くにいてくれる、優しい彼女さんを」
冗談めかして――でも、半分本気で――酷いことを言ってみる。
「そんなことしないよ」って言って欲しいだけなんだけれど。
彼は望みどおりの言葉を返してくれる。
でも。
もしも、また寂しくて耐えられなくなった時、
私は第二のMを求めるんだろうか。
ぼんやりと考える。
「そうだね」
「半年毎に、近くなったり遠くなったり」
「ホントだ」
「じゃあ、半年後にはyucoが帰ってくるのかな」
「違うよ、あなたがこっちへ来るんだよ」
「寂しくなるな」
「そう?」
「yucoは平気?」
「平気じゃなくても、我慢するしかないでしょ」
「強いな。俺は我慢できないかも」
「嘘つき。九州に行った時、平気だったじゃん」
「平気じゃなかったよ」
「ホントかなぁ」
「yucoの方が平気そうだった。強いな」
「……強くなんかないよ」
本当に強かったら、Mと会うこともなかったんだろう。
あなたの知らないところでつくった、寂しさのはけ口。
「寂しかったら、新しい彼女をつくれば良いんじゃない?
いつも近くにいてくれる、優しい彼女さんを」
冗談めかして――でも、半分本気で――酷いことを言ってみる。
「そんなことしないよ」って言って欲しいだけなんだけれど。
彼は望みどおりの言葉を返してくれる。
でも。
もしも、また寂しくて耐えられなくなった時、
私は第二のMを求めるんだろうか。
ぼんやりと考える。
「大丈夫。そばに、いるよ」
2005年2月3日昨日は彼と飲みに行って、久々に家に泊まった。
酔っ払って寝てしまったから、セックスもしなかった。
彼女としては酷いのだろうと思いながら、やっぱり私はホッとしてた。
朝。
彼を会社に送り出し、
ひとりになって、コーヒーを煎れた。
ミルクが混ざっていくのを見ながら、ぼんやりと思い出した。
狭いベッドに、ふたりで寝て。
いつものように、すぐ隣に彼がいて。
朝方。
私はいろんな夢をみて、寝ぼけて、子供みたいにぐずってた。
彼の腕をさがして、ぎゅうっとつかまえた。
「大丈夫。そばにいるよ」
彼はそう言って、抱きしめてくれてた……。
私がこんな状態でも、彼は優しいまま。
やっぱり、そばにいてと願う時にそばにいてくれる人は、彼なんだなぁ……
って思う。
私も彼に「私がそばにいるよ」って言ってあげたい。
時には彼を包みこめるくらい、オトナになりたい。
100%の気持ちで、彼を受け入れてあげたい。
今は多分、できないけれど。
酔っ払って寝てしまったから、セックスもしなかった。
彼女としては酷いのだろうと思いながら、やっぱり私はホッとしてた。
朝。
彼を会社に送り出し、
ひとりになって、コーヒーを煎れた。
ミルクが混ざっていくのを見ながら、ぼんやりと思い出した。
狭いベッドに、ふたりで寝て。
いつものように、すぐ隣に彼がいて。
朝方。
私はいろんな夢をみて、寝ぼけて、子供みたいにぐずってた。
彼の腕をさがして、ぎゅうっとつかまえた。
「大丈夫。そばにいるよ」
彼はそう言って、抱きしめてくれてた……。
私がこんな状態でも、彼は優しいまま。
やっぱり、そばにいてと願う時にそばにいてくれる人は、彼なんだなぁ……
って思う。
私も彼に「私がそばにいるよ」って言ってあげたい。
時には彼を包みこめるくらい、オトナになりたい。
100%の気持ちで、彼を受け入れてあげたい。
今は多分、できないけれど。
静かに離れるこころ
2005年1月27日手をつないで歩きながら。
食事をしながら。
肌をくっつけて横になりながら。
ぎゅっと抱き合ったり、
キスしたり、
ウトウトしたりしながら。
一緒にいるとき、私はMとたくさん話をする。
他愛の無い話も、真面目な話も、Mはちゃんと聞いて答えてくれる。
ちゃんと「自分」を持ってる。
私がMのことを「オトナだな」って思う瞬間。
「俺はyucoのこと、好きだよ。こんなこと言っちゃいけないんだろうけど」
「好き、にも色々あるでしょ」
「一人の女性として好きだよ。お互いに相手がいなかったら、付き合ってた。
そういう『好き』だよ」
「……」
「今は、yucoを彼氏に借りてるって感じだもんなあ」
借りものだから、大事にされてるのね。
そんな皮肉が浮かぶ。
「yucoにとって、俺はどうなの?」
「どうって?」
「暇潰しの相手なら、それでも良いし」
「暇潰しじゃないよ」
即答した。でも、その先の言葉はゆっくり選んだ。
「Mのことは嫌いじゃない。
えっちしてることを除けば、すごく良いトモダチだと思う。
でも、実際はこうやって一緒にいて……。
こういう関係をどう言い表して良いのかわからないよ」
「うーん、難しいな。でも、嫌われてはないわけか」
「嫌いじゃないよ」
でも、もしも本当に好きになったら、
最後に泣くのは自分だってわかってる。
Mには奥様がいて、最後には必ず奥様のところへ戻るってわかってるから、
絶対に好きにはならない。
近づき過ぎないように。
愛さないように。
傷つかないように。
ふと訊かれた。
「彼氏とはうまくいってる?」
私はどきりとする。胸がぎゅうっとなる。
「わからない。
彼氏は好きだって言ってくれる。私も彼氏のことは好きだと思う。
でも、うまくいってないと思う」
彼は良い人。
甘えたり、我侭言ったりできる、唯一の人。
抱きしめられれば嬉しい。一緒に遊ぶのも楽しい。
でも、うまくいかない。
何が変わってしまったのかわからない。
ただ、
彼とのセックスで、私は濡れなくなった。感じない。痛い。
ひどくショックで、すごく悩んだ。
心が離れているのかもしれない。
そう自覚した瞬間だった。
求められれば、受け入れてあげたい。
そう思うのに、身体が反応しない。
Mともセックスできてなかったら、
私は自分の身体がおかしくなったと思っただろう。
彼が、友達であればよかったのに。
それなら、心地良い関係を続けられたかもしれないのに。
離れたいわけじゃないのに。
大事な人であることに変わりはないのに。
嫌いになったわけでもないのに、終わってしまう恋愛。
そういうものもあるのだろうか。
「あるかもしれないね」Mは言う。
「でも、彼氏は悪くないのに。悪いことしてるのは私のほうなのに」
苦しいくらいに抱きしめられた。
「『悪いこと』だなんて言わない」
「でも、悪いことだもん……」
彼とMと。
この先どうなっているのか。
私にはちっとも見えない。
けれどもうすぐ大学を卒業して、社会人になって。
きっと環境は一変する。
私自身も変わっていく。
今のまま、はありえない。
多分、何もかもが。
ほんの数ヵ月後には、私は誰とも一緒にいないかもしれない。
「もし、今みたいに会えなくなっても、何年後でも、またyucoに会いたいと思うよ」
キザなセリフ。
本当にそんなこと思ってるの?
頭で疑い、言葉ではぐらかす。
そして、身体では求めてる。
嘘でもいい。
誰よりもそばにいて欲しい。
今、この瞬間は、そう思うだけ。
食事をしながら。
肌をくっつけて横になりながら。
ぎゅっと抱き合ったり、
キスしたり、
ウトウトしたりしながら。
一緒にいるとき、私はMとたくさん話をする。
他愛の無い話も、真面目な話も、Mはちゃんと聞いて答えてくれる。
ちゃんと「自分」を持ってる。
私がMのことを「オトナだな」って思う瞬間。
「俺はyucoのこと、好きだよ。こんなこと言っちゃいけないんだろうけど」
「好き、にも色々あるでしょ」
「一人の女性として好きだよ。お互いに相手がいなかったら、付き合ってた。
そういう『好き』だよ」
「……」
「今は、yucoを彼氏に借りてるって感じだもんなあ」
借りものだから、大事にされてるのね。
そんな皮肉が浮かぶ。
「yucoにとって、俺はどうなの?」
「どうって?」
「暇潰しの相手なら、それでも良いし」
「暇潰しじゃないよ」
即答した。でも、その先の言葉はゆっくり選んだ。
「Mのことは嫌いじゃない。
えっちしてることを除けば、すごく良いトモダチだと思う。
でも、実際はこうやって一緒にいて……。
こういう関係をどう言い表して良いのかわからないよ」
「うーん、難しいな。でも、嫌われてはないわけか」
「嫌いじゃないよ」
でも、もしも本当に好きになったら、
最後に泣くのは自分だってわかってる。
Mには奥様がいて、最後には必ず奥様のところへ戻るってわかってるから、
絶対に好きにはならない。
近づき過ぎないように。
愛さないように。
傷つかないように。
ふと訊かれた。
「彼氏とはうまくいってる?」
私はどきりとする。胸がぎゅうっとなる。
「わからない。
彼氏は好きだって言ってくれる。私も彼氏のことは好きだと思う。
でも、うまくいってないと思う」
彼は良い人。
甘えたり、我侭言ったりできる、唯一の人。
抱きしめられれば嬉しい。一緒に遊ぶのも楽しい。
でも、うまくいかない。
何が変わってしまったのかわからない。
ただ、
彼とのセックスで、私は濡れなくなった。感じない。痛い。
ひどくショックで、すごく悩んだ。
心が離れているのかもしれない。
そう自覚した瞬間だった。
求められれば、受け入れてあげたい。
そう思うのに、身体が反応しない。
Mともセックスできてなかったら、
私は自分の身体がおかしくなったと思っただろう。
彼が、友達であればよかったのに。
それなら、心地良い関係を続けられたかもしれないのに。
離れたいわけじゃないのに。
大事な人であることに変わりはないのに。
嫌いになったわけでもないのに、終わってしまう恋愛。
そういうものもあるのだろうか。
「あるかもしれないね」Mは言う。
「でも、彼氏は悪くないのに。悪いことしてるのは私のほうなのに」
苦しいくらいに抱きしめられた。
「『悪いこと』だなんて言わない」
「でも、悪いことだもん……」
彼とMと。
この先どうなっているのか。
私にはちっとも見えない。
けれどもうすぐ大学を卒業して、社会人になって。
きっと環境は一変する。
私自身も変わっていく。
今のまま、はありえない。
多分、何もかもが。
ほんの数ヵ月後には、私は誰とも一緒にいないかもしれない。
「もし、今みたいに会えなくなっても、何年後でも、またyucoに会いたいと思うよ」
キザなセリフ。
本当にそんなこと思ってるの?
頭で疑い、言葉ではぐらかす。
そして、身体では求めてる。
嘘でもいい。
誰よりもそばにいて欲しい。
今、この瞬間は、そう思うだけ。
ポケットの中で手をつなぐ
2005年1月23日「雪だね」
「雪だねぇ」
「手、冷たいなぁ」
「だって寒いもん」
「ポケット、貸して」
「仕方ないなぁ」
「ポケットの中は、あったかいね」
「俺の手があったかいからだよ」
「うらやましいなぁ」
「うらやましいだろ」
「久々に、ゆっくりデートしたね」
「そうだねぇ」
「31日、休みとったよ」
「31日?」
「3連休。yucoと一緒にいたい」
「ん……」
「***に行こうか」
「***に?」
「yucoが行きたいなら、行くよ」
「私は……」
Mを思い出して、
どきりとする。
「雪だねぇ」
「手、冷たいなぁ」
「だって寒いもん」
「ポケット、貸して」
「仕方ないなぁ」
「ポケットの中は、あったかいね」
「俺の手があったかいからだよ」
「うらやましいなぁ」
「うらやましいだろ」
「久々に、ゆっくりデートしたね」
「そうだねぇ」
「31日、休みとったよ」
「31日?」
「3連休。yucoと一緒にいたい」
「ん……」
「***に行こうか」
「***に?」
「yucoが行きたいなら、行くよ」
「私は……」
Mを思い出して、
どきりとする。
夢のかけら
2005年1月21日今日、ふとしたきっかけで、
ある人が夢のかけらをつかんだことを知った。
同じ大学で、同じ夢を持ってた友達。
かつて私も彼と同じフィールドにいて、同じ夢を追ってた。
私も彼も、同じ分野のスペシャリストを目指してた。
スタートは同じだったし、本当の意味での第一歩は同じ時期に踏み出した。
私は、いろんな理由でその夢を諦めた。
彼は、今もその目標を追い続けている。
私は卒業して働くことを選んだ。
彼は大学に残って研究し続けることを選んだ。
卒業したら、お互い違う方向へ進んで行く。
頑張れば、私も追い続けられたかもしれない。
私は、もっと頑張れたかもしれない。
そう思うと、ちょっとだけ胸がぎゅっとなる。
後悔というより、たぶん、それは未練と嫉妬。
私には、まだ勉強したいっていう未練がある。
私は、ちょっとだけ彼に嫉妬してる。
でも、本当は頑張って、て思う。
夢のかけらをいっぱい集めて組み立てて、
彼はきっとスペシャリストになると思う。
私は、もう彼と同じ夢をもつことはないけれど、
新しい目標がみつかったら、今度はちゃんと追いかけようと思う。
これでもか、ってくらい。
しつこいくらい。
みっともないくらい。
彼を見てて、素直にそう思えた。
嫉妬してるのに、やっぱり嬉しい。
ある人が夢のかけらをつかんだことを知った。
同じ大学で、同じ夢を持ってた友達。
かつて私も彼と同じフィールドにいて、同じ夢を追ってた。
私も彼も、同じ分野のスペシャリストを目指してた。
スタートは同じだったし、本当の意味での第一歩は同じ時期に踏み出した。
私は、いろんな理由でその夢を諦めた。
彼は、今もその目標を追い続けている。
私は卒業して働くことを選んだ。
彼は大学に残って研究し続けることを選んだ。
卒業したら、お互い違う方向へ進んで行く。
頑張れば、私も追い続けられたかもしれない。
私は、もっと頑張れたかもしれない。
そう思うと、ちょっとだけ胸がぎゅっとなる。
後悔というより、たぶん、それは未練と嫉妬。
私には、まだ勉強したいっていう未練がある。
私は、ちょっとだけ彼に嫉妬してる。
でも、本当は頑張って、て思う。
夢のかけらをいっぱい集めて組み立てて、
彼はきっとスペシャリストになると思う。
私は、もう彼と同じ夢をもつことはないけれど、
新しい目標がみつかったら、今度はちゃんと追いかけようと思う。
これでもか、ってくらい。
しつこいくらい。
みっともないくらい。
彼を見てて、素直にそう思えた。
嫉妬してるのに、やっぱり嬉しい。