姿が見えなくなる瞬間
2005年1月18日必要以上に離れていることに慣れてしまうと、
もう再び歩み寄ることはないのかもしれない。
いつものように手をのばしても、
あなたの手はそこにないかもしれない。
ふと気づいて顔を上げたとき、
あなたの姿はどこにもないかもしれない。
あなたの何気ない一言で、
私はぼんやりと悟る。
あなたの姿が見えなくなったとき、
私は、あなたをさがすのだろうか。
それとも、
いつものように立ち尽くすだけなのだろうか。
もう再び歩み寄ることはないのかもしれない。
いつものように手をのばしても、
あなたの手はそこにないかもしれない。
ふと気づいて顔を上げたとき、
あなたの姿はどこにもないかもしれない。
あなたの何気ない一言で、
私はぼんやりと悟る。
あなたの姿が見えなくなったとき、
私は、あなたをさがすのだろうか。
それとも、
いつものように立ち尽くすだけなのだろうか。
逃避としてのセックス
2005年1月13日落ち込んで、泣きたくなって、でも泣けなくて。
色んなことがどうでも良くなって、でも、なにひとつ捨てることはできなくて。
眠りたくてお酒を飲んで、でも酔えないし眠れなくて。
色んなことがどうでも良くなって、でも、なにひとつ捨てることはできなくて。
眠りたくてお酒を飲んで、でも酔えないし眠れなくて。
弱音を吐いても良いでしょうか
2005年1月12日泣きたい、泣きたい、泣きたい。
でも、涙なんて出てこない。
あたたかい胸に額をこすりつけて泣きたい。
ひとりじゃ、泣くこともできないよ。
でも、涙なんて出てこない。
あたたかい胸に額をこすりつけて泣きたい。
ひとりじゃ、泣くこともできないよ。
ふたりの望む距離
2005年1月10日彼は、一緒に居られるのなら、いつでも同じ場所に一緒にいたいと言う。
会うのが当然で、時には仕事や友達との約束のために会わない日もある。
そういう、ごく近しい関係が心地良いと言う。
私は、寂しがりだし、ずっと手の届かない所に居るのは耐えられないけれど、
いつでも空間を共にしたいわけじゃない。
会わないのが普通で、会いたい時には会う。
そういう、ある程度の距離を保った関係が心地良い。
近づきすぎると、たまに苦しくなる。
ふたりの望む距離が、違う。
会うのが当然で、時には仕事や友達との約束のために会わない日もある。
そういう、ごく近しい関係が心地良いと言う。
私は、寂しがりだし、ずっと手の届かない所に居るのは耐えられないけれど、
いつでも空間を共にしたいわけじゃない。
会わないのが普通で、会いたい時には会う。
そういう、ある程度の距離を保った関係が心地良い。
近づきすぎると、たまに苦しくなる。
ふたりの望む距離が、違う。
彼とのこと
2005年1月10日夕方まで一緒に過ごす予定だった。
けれど、彼は昼頃に帰った。
喧嘩したわけでも何でもない。
ただ「帰る」と言って帰っただけだ。
とめる理由はないから、私はとめない。
追うのは嫌いだから、私は追わない。
付き合う前から、ずっとそうだった。
いつものことだ。
それで、うまくいっていた。
だから、いつも通りの「ばいばい」を言う。
でも……
多分、うまくいっていないと思う。
喧嘩をして以来。
けれど、彼は昼頃に帰った。
喧嘩したわけでも何でもない。
ただ「帰る」と言って帰っただけだ。
とめる理由はないから、私はとめない。
追うのは嫌いだから、私は追わない。
付き合う前から、ずっとそうだった。
いつものことだ。
それで、うまくいっていた。
だから、いつも通りの「ばいばい」を言う。
でも……
多分、うまくいっていないと思う。
喧嘩をして以来。
次はいつ?
2005年1月9日『次はいつ会おう?』
メールの最後にはそんな言葉がぽつり。
短い言葉でさりげなく書いているけれど、多分一番言いたかったのはこれだろう。
会う頻度が上がってる。
お酒をのみながら話をするだけでも、Mと会う時間は楽しい。
だから、彼に対して悪いと思う気持ちを別にすれば、
会う回数が増えても嫌だとは思わない。
むしろ、私自身会いたいと思っているんだと思う。
でも、
近づきすぎると、離れなれなくなりそうじゃない?
それが、ちょっとだけ怖い。
メールの最後にはそんな言葉がぽつり。
短い言葉でさりげなく書いているけれど、多分一番言いたかったのはこれだろう。
会う頻度が上がってる。
お酒をのみながら話をするだけでも、Mと会う時間は楽しい。
だから、彼に対して悪いと思う気持ちを別にすれば、
会う回数が増えても嫌だとは思わない。
むしろ、私自身会いたいと思っているんだと思う。
でも、
近づきすぎると、離れなれなくなりそうじゃない?
それが、ちょっとだけ怖い。
聞きたくない時ほど……
2005年1月7日戻ってきた。
半年ぶりに帰った実家。
周りの変化の多さに驚きっぱなしの帰省。
小学校来の同級生がママになっていたり、
従兄にジュニアが誕生していたり。
彼氏ができて3ヶ月の親友にお惚気を聞かされたり、
直接の知り合いではないけれど、既婚者と愛人関係にあった子が、
妊娠したという話を聞いたり。
なんだか、結婚や恋愛に関係する話題満載の帰省だった。
でも、それが今の私にはちょっと苦しかったりして。
今回の帰省では、恋愛絡みの話をあまり聞きたくなかったのが本音。
話を聞くたびに、彼とMのことが頭をよぎる。
クリスマスの話で彼とのケンカのことを思い出したり、
テーマパークの話で、Mとのデートを思い出したり。
イルミネーションの話で、彼とMのことが同時に頭をよぎったり……。
特に、既婚者と愛人関係にあるという子の話が出ると、耳が痛かった(苦笑)。
話の中のちょっとした事に、自分と彼、そして自分とMを重ねていた。
そして、何故か苦しくなった。
多分、自分の中で整理されてないことが多いからだ。
今回の帰省では、恋愛話からは少し離れていたかったのだけれど、
そんな余裕はなかった。
女友達と集まるのだから、当然といえば当然。
結局、友達との約束を消化すると同時に戻ってきてしまった。
ちょっと、ずるかったかな?
半年ぶりに帰った実家。
周りの変化の多さに驚きっぱなしの帰省。
小学校来の同級生がママになっていたり、
従兄にジュニアが誕生していたり。
彼氏ができて3ヶ月の親友にお惚気を聞かされたり、
直接の知り合いではないけれど、既婚者と愛人関係にあった子が、
妊娠したという話を聞いたり。
なんだか、結婚や恋愛に関係する話題満載の帰省だった。
でも、それが今の私にはちょっと苦しかったりして。
今回の帰省では、恋愛絡みの話をあまり聞きたくなかったのが本音。
話を聞くたびに、彼とMのことが頭をよぎる。
クリスマスの話で彼とのケンカのことを思い出したり、
テーマパークの話で、Mとのデートを思い出したり。
イルミネーションの話で、彼とMのことが同時に頭をよぎったり……。
特に、既婚者と愛人関係にあるという子の話が出ると、耳が痛かった(苦笑)。
話の中のちょっとした事に、自分と彼、そして自分とMを重ねていた。
そして、何故か苦しくなった。
多分、自分の中で整理されてないことが多いからだ。
今回の帰省では、恋愛話からは少し離れていたかったのだけれど、
そんな余裕はなかった。
女友達と集まるのだから、当然といえば当然。
結局、友達との約束を消化すると同時に戻ってきてしまった。
ちょっと、ずるかったかな?
たくさんの『事件』
2004年12月31日2004年も今日で最後。
もうカウントダウン状態。
いつもは気にしないのだけれど、
今年はなんだか色々あったなぁ……としみじみ振り返ってしまう。
こと恋愛に関しては、ここ数ヶ月で大事件がたくさん起こった。
彼との遠距離、そして帰還。
Mとの出会い。
秘密のデート。
彼以外の男性とのセックス。
初めてのケンカ。
喜んだり落ち込んだり悩んだり……。
くるくると忙しく気持ちを変化させながら過ごしていた。
どれも年が変わったから終わり、という話ではないのだけれど。
来年の今ごろ、彼やMとの関係はどうなっているのだろう。
どちらかを失っているか、
どちらも失っているか。
あるいは、どちらとも関係を続けているか。
まったく予想がつかない。
今はもう、悩むのをやめよう。
ただ、時の流れるままに。
今はただ、自分の気持ちの赴くままに。
もうカウントダウン状態。
いつもは気にしないのだけれど、
今年はなんだか色々あったなぁ……としみじみ振り返ってしまう。
こと恋愛に関しては、ここ数ヶ月で大事件がたくさん起こった。
彼との遠距離、そして帰還。
Mとの出会い。
秘密のデート。
彼以外の男性とのセックス。
初めてのケンカ。
喜んだり落ち込んだり悩んだり……。
くるくると忙しく気持ちを変化させながら過ごしていた。
どれも年が変わったから終わり、という話ではないのだけれど。
来年の今ごろ、彼やMとの関係はどうなっているのだろう。
どちらかを失っているか、
どちらも失っているか。
あるいは、どちらとも関係を続けているか。
まったく予想がつかない。
今はもう、悩むのをやめよう。
ただ、時の流れるままに。
今はただ、自分の気持ちの赴くままに。
心地良い関係
2004年12月29日いままでと同じように、彼の肩に頭を預ける。
肌の感触もあたたかさも何も変わってない。
あなたがこうやって近くにいれば、
何の不安もなく眠れると思ってた。
それは、あなたが心地良い部分だけを見せてくれていたから。
窮屈でも、痛くても重くても、あなたがじっと我慢していてくれたから。
泣き出す理由なんかなかったけれど、
わけもなく泣き出してしまいそうな気がして、
私はじっと唇を噛んでいた。
言葉もなく分かり合えるような関係。
仮にそんなものがあれば、私たちはうまくいってたのだろうか。
何も問題なく、ずっと笑っていられたのだろうか。
悲しかったのは、ケンカしたことじゃない。
ケンカできなかったこと。
自分たちの気持ちをぶつけるのに、
こんなにも苦労しなければならないなんて。
周りからどんなに仲が良いと言われても、
ただそれは衝突せずにいたというだけで。
ぶつかりあう要素がなかったわけじゃなくて、
ぶつかることを避けていただけで。
見たくない物は見ずに、ただ心地良い部分に触れ合うだけの関係だったんだね。
気遣いじゃないよ。
自分が傷つくことと、相手を傷つけることが怖かっただけ。
傷つけて、傷ついて、それでも一緒にいられる自信がなかっただけ。
建前と優しい言葉だけのつながりは、優しいけどすごく脆いよ。
少しでも揺れれば、ほどけてしまうくらい。
痛いくらいにぎゅっとつかまえていてください。
暴れても叩き合ってもほどけないくらいに。
涙で顔とこころがぐしゃぐしゃになっているときでも、
残酷なくらい真正面から見つめあえる様な、
そんな関係に、なれたら良いね。
肌の感触もあたたかさも何も変わってない。
あなたがこうやって近くにいれば、
何の不安もなく眠れると思ってた。
それは、あなたが心地良い部分だけを見せてくれていたから。
窮屈でも、痛くても重くても、あなたがじっと我慢していてくれたから。
泣き出す理由なんかなかったけれど、
わけもなく泣き出してしまいそうな気がして、
私はじっと唇を噛んでいた。
言葉もなく分かり合えるような関係。
仮にそんなものがあれば、私たちはうまくいってたのだろうか。
何も問題なく、ずっと笑っていられたのだろうか。
悲しかったのは、ケンカしたことじゃない。
ケンカできなかったこと。
自分たちの気持ちをぶつけるのに、
こんなにも苦労しなければならないなんて。
周りからどんなに仲が良いと言われても、
ただそれは衝突せずにいたというだけで。
ぶつかりあう要素がなかったわけじゃなくて、
ぶつかることを避けていただけで。
見たくない物は見ずに、ただ心地良い部分に触れ合うだけの関係だったんだね。
気遣いじゃないよ。
自分が傷つくことと、相手を傷つけることが怖かっただけ。
傷つけて、傷ついて、それでも一緒にいられる自信がなかっただけ。
建前と優しい言葉だけのつながりは、優しいけどすごく脆いよ。
少しでも揺れれば、ほどけてしまうくらい。
痛いくらいにぎゅっとつかまえていてください。
暴れても叩き合ってもほどけないくらいに。
涙で顔とこころがぐしゃぐしゃになっているときでも、
残酷なくらい真正面から見つめあえる様な、
そんな関係に、なれたら良いね。
Re:Re:
2004年12月26日朝になって彼から返ってきたメールには、
やっぱり本音のかけらすら書かれていなかった。
今までと同じふうを装った内容が書かれているだけ。
まるで、何も起こらなかったみたいに。
私が昨日送ったメールは届かなかったのだろうか。
そう思えるほど。
でも、タイトルの「Re:」の数は、私のメールが届いていることを証明している。
もうこのまま、何も言わず何もなかったことにして、
「いつも通り」を装って接していた方が良いのだろうか。
そうして時間が経てば、本当に元のように接することができるようになるのだろうか。
もしそうすることができたとしても、
飲み込んだ言葉や気持ちはどうなってしまうのだろう。
ずっとずっと気づかないふりをして、お腹の中に溜めておくのだろうか。
ただ「楽しいこと」のみを共有するだけの関係ならそれでもいい。
近づきすぎることのない友人関係なら、それでも成り立つだろう。
でも、あなたとはそんな関係でありたくない。
気持ちをごまかし続けたまま一緒にいて、何になるの?
ちゃんとした「ケンカ」もさせてくれないの?
お互いの悲しい顔には目を背けていなければいけないの?
気づかないふりをしていなくてはいけないの?
うわべの笑顔だけを見て、嘘の満足をしていればいいの?
今まで、心配や迷惑をかけないように、本音を飲み込んできた。
きっと、あなたも同じだったんだろう。
それを、これからもずっと続けていくの?
きっと、一緒にいる時間が長くなればなるほど、悲しくなるよ。
私は、嫌だよ。
ちゃんと向き合って話をしたいよ。
どうすれば、あなたはちゃんと向き合ってくれるのだろう。
やっぱり本音のかけらすら書かれていなかった。
今までと同じふうを装った内容が書かれているだけ。
まるで、何も起こらなかったみたいに。
私が昨日送ったメールは届かなかったのだろうか。
そう思えるほど。
でも、タイトルの「Re:」の数は、私のメールが届いていることを証明している。
もうこのまま、何も言わず何もなかったことにして、
「いつも通り」を装って接していた方が良いのだろうか。
そうして時間が経てば、本当に元のように接することができるようになるのだろうか。
もしそうすることができたとしても、
飲み込んだ言葉や気持ちはどうなってしまうのだろう。
ずっとずっと気づかないふりをして、お腹の中に溜めておくのだろうか。
ただ「楽しいこと」のみを共有するだけの関係ならそれでもいい。
近づきすぎることのない友人関係なら、それでも成り立つだろう。
でも、あなたとはそんな関係でありたくない。
気持ちをごまかし続けたまま一緒にいて、何になるの?
ちゃんとした「ケンカ」もさせてくれないの?
お互いの悲しい顔には目を背けていなければいけないの?
気づかないふりをしていなくてはいけないの?
うわべの笑顔だけを見て、嘘の満足をしていればいいの?
今まで、心配や迷惑をかけないように、本音を飲み込んできた。
きっと、あなたも同じだったんだろう。
それを、これからもずっと続けていくの?
きっと、一緒にいる時間が長くなればなるほど、悲しくなるよ。
私は、嫌だよ。
ちゃんと向き合って話をしたいよ。
どうすれば、あなたはちゃんと向き合ってくれるのだろう。
飲み込まないで
2004年12月25日とりあえずの「ごめんなさい」では、何も解決しない。
言いたいことも全部飲み込んだまま。
たとえ激しい言い合いになっても良いし、それで傷ついてもいい。
だから、ちゃんと会って、お互いに納得できるまで話したい。
彼と電話をした。
彼はいつもどおりに振舞おうとしてくれたのだろう。
妙に形式ばった「こんばんわ」から始まる電話も、
「今何してた?」という問いも、いつもと同じパターン。
でも、声色がいつもと違うのがわかる。
そんな声を聞いていると、よけいに苦しくなる。
「昨日はごめんね」私は言った。
「どうして?」彼が訊いた。
私は、自分が彼に対して謝らなくてはいけないと思うことと、
その理由を言った。
気持ちに任せて溜め込んだ言葉を全部吐き出す、
なんてことはやっぱりできなかったけれど、
それでも、言える限りの言葉を伝えようとした。
でも、そのことに彼は何も言ってくれなかった。
「俺も、ごめん」彼が言った。
「どうして謝るの?」私は訊いた。
彼にも話して欲しかった。
どんなことでも、言いたい言葉は全部言って欲しいと思った。
でも、彼は黙ってしまった。
自分の気持ちを言おうかどうしようか迷っているのだとわかった。
相手を傷つけるような言葉なら、なおさら言いよどんでしまう。
きっと彼も同じだ。
何か言ってよ。そう思った。
何も言われずに傷つくなら、何か言われて傷ついた方が良い。
でも、彼は何も言ってくれなかった。
いつも通りを装った話。
明るそうに聞こえて、本当は酷く強張った声。
聞きたいのは、そんな声じゃないよ。そんな言葉じゃないよ。
そう思った。
でも、私もまた、その言葉を飲み込んでしまった。
「また後でメールするよ」
彼が言った。
電話は終わってしまった。
何も話せず、会う約束もないまま。
後からきたメールにも、怒りの理由も責める言葉もなかった。
あなたの言葉は、いつも優しすぎる。
メールの中でさえも、言葉を飲み込んでいるんだね。
その姿が、見えてしまう。
私が反省しなくちゃいけないことはいっぱいあるし、
謝らなくちゃいけないこともいっぱいある。
でも、あなたももっと文句を言ってください。
あなたは優しいから、いつも我慢しているような気がする。
長いメールを返した。
「我慢しないで、本音を言ってください」
ほんの少しでも、私の気持ちをぶつけるメール。
送るのが怖かった。
ただ、何も言わずにいるのはもうやめたいと思った。
返事はこない。
もう、元のようになれないんじゃないだろうか。
急に不安になった。
言いたいことも全部飲み込んだまま。
たとえ激しい言い合いになっても良いし、それで傷ついてもいい。
だから、ちゃんと会って、お互いに納得できるまで話したい。
彼と電話をした。
彼はいつもどおりに振舞おうとしてくれたのだろう。
妙に形式ばった「こんばんわ」から始まる電話も、
「今何してた?」という問いも、いつもと同じパターン。
でも、声色がいつもと違うのがわかる。
そんな声を聞いていると、よけいに苦しくなる。
「昨日はごめんね」私は言った。
「どうして?」彼が訊いた。
私は、自分が彼に対して謝らなくてはいけないと思うことと、
その理由を言った。
気持ちに任せて溜め込んだ言葉を全部吐き出す、
なんてことはやっぱりできなかったけれど、
それでも、言える限りの言葉を伝えようとした。
でも、そのことに彼は何も言ってくれなかった。
「俺も、ごめん」彼が言った。
「どうして謝るの?」私は訊いた。
彼にも話して欲しかった。
どんなことでも、言いたい言葉は全部言って欲しいと思った。
でも、彼は黙ってしまった。
自分の気持ちを言おうかどうしようか迷っているのだとわかった。
相手を傷つけるような言葉なら、なおさら言いよどんでしまう。
きっと彼も同じだ。
何か言ってよ。そう思った。
何も言われずに傷つくなら、何か言われて傷ついた方が良い。
でも、彼は何も言ってくれなかった。
いつも通りを装った話。
明るそうに聞こえて、本当は酷く強張った声。
聞きたいのは、そんな声じゃないよ。そんな言葉じゃないよ。
そう思った。
でも、私もまた、その言葉を飲み込んでしまった。
「また後でメールするよ」
彼が言った。
電話は終わってしまった。
何も話せず、会う約束もないまま。
後からきたメールにも、怒りの理由も責める言葉もなかった。
あなたの言葉は、いつも優しすぎる。
メールの中でさえも、言葉を飲み込んでいるんだね。
その姿が、見えてしまう。
私が反省しなくちゃいけないことはいっぱいあるし、
謝らなくちゃいけないこともいっぱいある。
でも、あなたももっと文句を言ってください。
あなたは優しいから、いつも我慢しているような気がする。
長いメールを返した。
「我慢しないで、本音を言ってください」
ほんの少しでも、私の気持ちをぶつけるメール。
送るのが怖かった。
ただ、何も言わずにいるのはもうやめたいと思った。
返事はこない。
もう、元のようになれないんじゃないだろうか。
急に不安になった。
静かすぎるケンカ
2004年12月24日はっきりとしたきっかけなんてなかったと思う。
ただ、気づけはお互いに黙ったまま向かい合って座っていた。
ほんの1時間前までは笑いあってた。
その頬には、もう笑顔のかけらもなくて。
何度も「大好きだよ」と言っていた口からも、
もう何の言葉も出てこない。
「今日はもう帰る」
どちらともなく言った。
駅前で、じっと向かい合った。
でも、やっぱり二人とも黙ったままで。
悲しかったし、寂しかった。辛かった。
でも、彼の顔には、何の表情もなかった。
私の顔には、何の感情も浮かばなかった。
ただ、冷たかった。すごく冷たかった。
「……じゃあね」
突然彼は踵を返して行ってしまった。
何か言いたかった。
「ごめん」でも「待って」でも良かった。
責める言葉ですら良かった。
でも、何も言えなかった。
唇を噛むことしかできなかった。
ぎゅっとかみしめて立ち尽くすことしかできなかった。
私は馬鹿だ。
逃げるようにして家に帰った。
ついさっきまで彼と一緒に「きれいだね」と言ってたクリスマスの装飾。
ツリーもケーキもリースもクリスマスソングも、全部見たくなかった。
背をまるめ、身を縮めて街中を突っ切った。
息が苦しかった。
飲み込もうとする涙と、吐き出したかった言葉が、
喉でぶつかって詰まっていた。
これが、あなたとの初めてのけんか?
だとしたら、静かすぎるよ。
あまりにも静かすぎるよ。
家に戻り、心が硬直したまま、しばらくの間ぼんやりとしていた。
しばらくして、何も考えないままパソコンを立ち上げた。
Mからメールが来ていた。
私が彼に怒りをぶつける権利なんてない。
わがままを言ったり、彼を責める権利なんてない。
でも、静かなけんかなんて、あまりにも哀しすぎる。
言葉をじっと飲み込んでいたのは、私だけじゃない。
あなたもだったんだね。
私たちは今まで、何も話せてなかったんだね。
少しも分かり合えてなかったの?
通じ合ってなかったの?
お腹に溜め込んだ気持ちも知らずに、うわべだけ見てたの?
携帯が鳴った。
彼からのメール。
「ごめん」の言葉。
涙が溢れた。
次から次へとこぼれて、流れた。
声を出して子供みたいに泣きじゃくった。
顔が熱くなって目が痛くて鼻がつんとした。
私は、こんなに悲しかったんだ。
泣き出してから、初めて気づいた。
彼と離れることが、こんなにも辛かったんだ。
あなたもきっと、同じなんだよね?
返したい言葉は山ほどある。
ぶつけたい気持ちも山ほどある。
でも、どんな言葉を並べても足りない。
何という言葉を返せば良いのだろう。
ただ、気づけはお互いに黙ったまま向かい合って座っていた。
ほんの1時間前までは笑いあってた。
その頬には、もう笑顔のかけらもなくて。
何度も「大好きだよ」と言っていた口からも、
もう何の言葉も出てこない。
「今日はもう帰る」
どちらともなく言った。
駅前で、じっと向かい合った。
でも、やっぱり二人とも黙ったままで。
悲しかったし、寂しかった。辛かった。
でも、彼の顔には、何の表情もなかった。
私の顔には、何の感情も浮かばなかった。
ただ、冷たかった。すごく冷たかった。
「……じゃあね」
突然彼は踵を返して行ってしまった。
何か言いたかった。
「ごめん」でも「待って」でも良かった。
責める言葉ですら良かった。
でも、何も言えなかった。
唇を噛むことしかできなかった。
ぎゅっとかみしめて立ち尽くすことしかできなかった。
私は馬鹿だ。
逃げるようにして家に帰った。
ついさっきまで彼と一緒に「きれいだね」と言ってたクリスマスの装飾。
ツリーもケーキもリースもクリスマスソングも、全部見たくなかった。
背をまるめ、身を縮めて街中を突っ切った。
息が苦しかった。
飲み込もうとする涙と、吐き出したかった言葉が、
喉でぶつかって詰まっていた。
これが、あなたとの初めてのけんか?
だとしたら、静かすぎるよ。
あまりにも静かすぎるよ。
家に戻り、心が硬直したまま、しばらくの間ぼんやりとしていた。
しばらくして、何も考えないままパソコンを立ち上げた。
Mからメールが来ていた。
私が彼に怒りをぶつける権利なんてない。
わがままを言ったり、彼を責める権利なんてない。
でも、静かなけんかなんて、あまりにも哀しすぎる。
言葉をじっと飲み込んでいたのは、私だけじゃない。
あなたもだったんだね。
私たちは今まで、何も話せてなかったんだね。
少しも分かり合えてなかったの?
通じ合ってなかったの?
お腹に溜め込んだ気持ちも知らずに、うわべだけ見てたの?
携帯が鳴った。
彼からのメール。
「ごめん」の言葉。
涙が溢れた。
次から次へとこぼれて、流れた。
声を出して子供みたいに泣きじゃくった。
顔が熱くなって目が痛くて鼻がつんとした。
私は、こんなに悲しかったんだ。
泣き出してから、初めて気づいた。
彼と離れることが、こんなにも辛かったんだ。
あなたもきっと、同じなんだよね?
返したい言葉は山ほどある。
ぶつけたい気持ちも山ほどある。
でも、どんな言葉を並べても足りない。
何という言葉を返せば良いのだろう。
クリスマス・イヴ
2004年12月23日今日はクリスマス・イヴ。
私にとっての。
クリスマス当日、彼は仕事。
それも、九州に行ってしまう。
ただの出張だけれど、日帰りはできない。
「だから、今年は23日がクリスマス・イヴで、24日がクリスマス」
彼が言っていた。
「いいかな?」
「いいよ」
「晩飯の店は予約したけど、それ以外はまだ未定だよ。どこに行きたい?」
「えーと……」悩んだ。
「……イルミネーションを見にいきたい」
「昼間は?」
「んー……思いつかない」
「じゃあ、当日までに考えておいて」
「うん。あなたもね」
イルミネーション。
前にMにも言った。
見に行きたい、って。
夜が明けたら、彼が迎えに来てくれる。
どんな顔をして、会おう。
私にとっての。
クリスマス当日、彼は仕事。
それも、九州に行ってしまう。
ただの出張だけれど、日帰りはできない。
「だから、今年は23日がクリスマス・イヴで、24日がクリスマス」
彼が言っていた。
「いいかな?」
「いいよ」
「晩飯の店は予約したけど、それ以外はまだ未定だよ。どこに行きたい?」
「えーと……」悩んだ。
「……イルミネーションを見にいきたい」
「昼間は?」
「んー……思いつかない」
「じゃあ、当日までに考えておいて」
「うん。あなたもね」
イルミネーション。
前にMにも言った。
見に行きたい、って。
夜が明けたら、彼が迎えに来てくれる。
どんな顔をして、会おう。
どうすればいいの?
2004年12月9日あなたを傷つけることをして、
あなたを裏切った。
すべてを終わらせようとして、
今度は自分がつらくなって。
そんな時に頼りたくなるのは、やっぱりあなたで。
欲しくなるのは、やっぱりあなたのぬくもりで。
でも、今はあなたに甘えてはいけない。
そんなの、ずるい。
そんなの、おかしい。
わかってるけど、
やっぱり強くなれない。
どうすればいい。
どうすればいいの?
あなたを裏切った。
すべてを終わらせようとして、
今度は自分がつらくなって。
そんな時に頼りたくなるのは、やっぱりあなたで。
欲しくなるのは、やっぱりあなたのぬくもりで。
でも、今はあなたに甘えてはいけない。
そんなの、ずるい。
そんなの、おかしい。
わかってるけど、
やっぱり強くなれない。
どうすればいい。
どうすればいいの?