自然消滅

2006年5月14日
仕事が急に忙しくなり、さらに風邪までひいてしまったため、
この一週間は会社と家のベッドを往復する毎日だった。
 
 
ふと気づくと、もう5日もMにメールを返してない。
 
たぶん、このまま放置し続ければ、
Mとの関係は、すぅっと消えてなくなってしまうのだろう。
 
この1年とはんぶんの間には、
何も起こらなかったんだよ、ということになってくれるのだろう。
 
 
 
携帯を取り出し、メール画面を開く。
返事をうとうとした指が、ふと躊躇して止まる。
 
 
さよならを言うより、終わりを告げるより、ずっと楽。この方が。
 
あたしたちは、そういう関係だから。
「さよなら」とか「ケジメ」を必要とする関係でもない。
 
 
忘れ去ってしまうこと。
何もなかったことにしてしまうこと。
それが、たぶん一番良い。
 
 
 
 
 
 
あの日。あたしとMがあった日。
 
あたしは、はっきりと覚えている。
 
 
待ち合わせ場所にいた、姿。
隣を歩く、横顔。
飲んでいたお酒。
手の温かさ。
 
触れたYシャツの感触。
その下の胸のかたさ。鼓動。その音。

プールオムの香りを、あたしは一瞬で覚えた。
それは「=M」という式をあたしの中に組み込んだ。
 
 
記憶がすこしずつこぼれ落ちていくのと同じように、
Mのことも、少しずつ忘れていく。
 
プールオムの香りが鼻をかすめても、
キミのことを思い出さなくなっていく。
 
そしていつか、それ無機質なひとつの記憶となって、
ただあるだけのものになっていく。
 
 
 
「次は、映画を見に行こう」

あったその日にした約束。
このまま守れなければ、きっとその方が良いのだろう。

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