緊張は、とけた?
2006年5月1日
その日の待ち合わせ場所は、
初めて会った日と同じ場所だった。
偶然?
あたしの職場からも、
Mの職場からも程よい距離なのだった。
偶然?
先に着いたMに電話をかけると、
はじめてあったときと同じ場所で待っていた。
Mは髪を切っていた。
いつものようにスーツだけれど、
相変わらず、ネクタイはつけていなかった。
「久々に会うと、緊張するね」
「そう?俺は平気だけどね」
「どれくらいぶりだろう」
「たぶん、半年くらいたってるんじゃない?」
「そっか。長いね」
「うん。でも、これからはもっとたくさん会える」
「おかえり」
「誕生日、おめでとう」
Mが言った。
「言うの、遅くなったけど」
「ありがと」
はじめて会ってから、どのくらい経っただろう。
そのころ、あたしはまだ学生だった。
Mにとっては、20代最後の年だ。
あたしは、その頃も彼と遠恋をしてて、
Mは奥様とケンカしてた。
そしてお互い、そのことを言い訳にして出会った。
あの日、握った手が温かかったことを、あたしはいちばん良く覚えてる。
あれから、1年とはんぶん。
手のあったかさは、ぜんぜん変わらない。
「まだ、緊張してる?」
あたしを抱きしめて、Mがきく。
胸に頭を預けると、心臓がトクトクいってた。
プールオムのにおいが、ほのかにした。
「うん。まだちょっとね」
きちんとクリーニングに出されたスーツの感触。
その奥にある、Mの身体のかたさ。
あったかい手が、髪を撫でてた。
何度かキスをして、もっと深いキスをする。
抱きしめるMの腕にだんだん力が入り、あたしは声を漏らした。
「まだ緊張はとけない?」
「ん。心臓がどきどきいってきた」
「俺もだよ」
あたしは、Mとは友達と会うような感覚で会ってる。。。と思う。
たとえ、どんなにMのあったかさが欲しくなっても、
深入りしないよう、のめりこまないよう、
警戒しつづけていた。
はじめは、遠くにいた彼の代わりとして。
それからは、一先輩として、友達として。
会えば、セックスをすることになる。
Mはきっとそれを目的にしている。
彼を傷つけている。
分かってて会ってる。
でも、気持ちは決して近づきすぎずにいようと思ってる。
気持のキョリ、依存してなければ、
あたしとMは「オカシナ」関係じゃないと思えるから。
「ワルイコト」をしているのではないと思えるから。
気持ちさえ近づきすぎなければ、
あたしのしてることは、『罪』じゃない。
ばかな屁理屈を、自分の中で組み立ててしまっている。
Mが果てて、あたしたちは抱き合ったまま、荒い息をする。
Mが、胸元に何度もキスをする。
あたしは、Mの髪を指で梳く。
「緊張は、とけた?」Mがきく。
「うん。。。」あたしはうなずく。
初めて会った日と同じ場所だった。
偶然?
あたしの職場からも、
Mの職場からも程よい距離なのだった。
偶然?
先に着いたMに電話をかけると、
はじめてあったときと同じ場所で待っていた。
Mは髪を切っていた。
いつものようにスーツだけれど、
相変わらず、ネクタイはつけていなかった。
「久々に会うと、緊張するね」
「そう?俺は平気だけどね」
「どれくらいぶりだろう」
「たぶん、半年くらいたってるんじゃない?」
「そっか。長いね」
「うん。でも、これからはもっとたくさん会える」
「おかえり」
「誕生日、おめでとう」
Mが言った。
「言うの、遅くなったけど」
「ありがと」
はじめて会ってから、どのくらい経っただろう。
そのころ、あたしはまだ学生だった。
Mにとっては、20代最後の年だ。
あたしは、その頃も彼と遠恋をしてて、
Mは奥様とケンカしてた。
そしてお互い、そのことを言い訳にして出会った。
あの日、握った手が温かかったことを、あたしはいちばん良く覚えてる。
あれから、1年とはんぶん。
手のあったかさは、ぜんぜん変わらない。
「まだ、緊張してる?」
あたしを抱きしめて、Mがきく。
胸に頭を預けると、心臓がトクトクいってた。
プールオムのにおいが、ほのかにした。
「うん。まだちょっとね」
きちんとクリーニングに出されたスーツの感触。
その奥にある、Mの身体のかたさ。
あったかい手が、髪を撫でてた。
何度かキスをして、もっと深いキスをする。
抱きしめるMの腕にだんだん力が入り、あたしは声を漏らした。
「まだ緊張はとけない?」
「ん。心臓がどきどきいってきた」
「俺もだよ」
あたしは、Mとは友達と会うような感覚で会ってる。。。と思う。
たとえ、どんなにMのあったかさが欲しくなっても、
深入りしないよう、のめりこまないよう、
警戒しつづけていた。
はじめは、遠くにいた彼の代わりとして。
それからは、一先輩として、友達として。
会えば、セックスをすることになる。
Mはきっとそれを目的にしている。
彼を傷つけている。
分かってて会ってる。
でも、気持ちは決して近づきすぎずにいようと思ってる。
気持のキョリ、依存してなければ、
あたしとMは「オカシナ」関係じゃないと思えるから。
「ワルイコト」をしているのではないと思えるから。
気持ちさえ近づきすぎなければ、
あたしのしてることは、『罪』じゃない。
ばかな屁理屈を、自分の中で組み立ててしまっている。
Mが果てて、あたしたちは抱き合ったまま、荒い息をする。
Mが、胸元に何度もキスをする。
あたしは、Mの髪を指で梳く。
「緊張は、とけた?」Mがきく。
「うん。。。」あたしはうなずく。
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