たくさんのキス
2005年10月5日待ち合わせの駅には、5分くらい遅れて着くように計算して行った。
来ない人を待つ、なんて事になったら嫌だとか、
ネガティブなことを考えてたから。
電車に乗っていたら、Mからのメール。
10分くらい遅れる、という。
あたしは、駅で待ってるのがなんとなく不安で、
町をふらふらしながら、連絡が来るのを待った。
暫くして、携帯がなった。
Mからだった。
どきりとしながら、駅に戻った。
改札近くにMの姿を見つけて、やっと約束が嘘じゃなかったんだ、って思った。
「ひさしぶり」って言われて、あたしはちょっとぎこちない返事をした。
あたしは、初めて会った時みたいに緊張してた。
「なんか、緊張するね」
あたしが言うと、Mは「そうかなぁ」って笑った。
「なんでだろう。あたし、けっこう緊張してるんだよ。
久しぶりだからかなぁ」
「そうだなぁ。一体何ヶ月ぶりだろ?」
「半年近く?」
「5ヶ月くらいか」
「長いね。過ぎるのははやかったけど」
Mは、ふとあたしの横髪を耳にかけた。
「なに?」
「yuco、ちょっと変わった?」
「そう? どの辺が?」
「いや、よくわからないけど。髪形のせいかなぁ」
「化粧のせいとか?」
「うーん」
結局、何処が変わって見えたのかわからなかったけれど、
たぶん、本当に東京にいた頃のあたしとは変わってるんだろうな、と思った。
Mの知らないところで、いろいろあったんだもん。
当たり前じゃん。
「Mさんは変わってないねぇ」
「そうだなぁ」
いつものように一緒にご飯をたべて。
いつものようにたくさん話をしているうちに、少しずつ緊張は解けていった。
けれど、ホテルに移動して、部屋に入ると、
また緊張がじわじわと押し寄せてきた。
初めて会ったときにそうだったように、
あたしは内装を見るフリをして立っていた。
ほんの少し鼓動が早くなって、指先がひんやりとしてぎこちなくなった。
Mに手をひかれてベッドに座った。
抱き寄せられて唇を重ねた。
よく知った香水の匂いと、ほんの少しの煙草の匂い。
変わってない。
Mの舌が入ってきたとき、あたしは思わずMのYシャツをぎゅうって掴んだ。
「緊張してるね」Mが言った。
「だって・・・」
「『だって』?」
あたしは、本当にこうやってMと会うだなんて思ってなかった。
約束したんだから当たり前だけど、
約束が実現するっていうことを、どこか非現実的なことみたいに思ってた。
『先』なんてあり得ないから。
ぷっつりとどこかで途絶えてしまっても、何の不思議もない関係だから。
なのに。
半年近く経ってキミに再会して。
ワルイコトって知ってるのに、また身体を重ねてる。
陶酔だか何だかわからないけれど、
キミの肌の熱さとか、腕のかたさとか、香水の匂いとか。。。
いろんなことを愛しいと思ってるあたしがいる。
ベッドに倒れこんで、Mがあたしの喉や胸元にたくさんキスをする。
髪をかきあげて、あたしの顔を覗き込む。
あたしは恥ずかしくて目をそらす。
「やっぱり、yucoはyucoのままだね」
って、頬を撫でて、額にキスした。
あたしはあたし。
だけど、始めにMが言ったように、半年前からは少し変わったんだと思う。
色んなことがあり過ぎたから。
Mの知らないところで、あたしはいっぱい泣いた。
自分自身を傷つけたりもした。
Mの知らない人と寝たりもした。
それが虚しくて、また泣いてた。
悲しい顔を見せるのは、Mじゃなかった。
あたしたちは、そーいう関係じゃないから。
その日、Mはたくさんキスをしてくれた。
唇を重ねるだけじゃなくて、
乳房を吸うだけじゃなくて、
おでこや、頬や、喉や、指に。
Mのぬくもりを感じたくて、あたしがMの胸に頬をつけてくっつくと、
こどもにするみたいに、頭をくしゅ、って撫でてくれた。
胸にくっついたまま、Mを見上げると、
前と同じように「ん?」って言って、あたしを見た。
そして、そのたびにキスをした。
抱きしめられて、抱かれて、
身体のいちばん奥に、強く触れられて。
息が切れるほどに、激しくて。
冷えてた指も、いつしか熱くなってた。
「そろそろ、出る時間だね」
Mが気づく。
「えー」って、あたしは冗談めかして言う。
離れたくない、って心から思っても、
そんなことは絶対に言わない。
部屋を出る前に「ぎゅ、ってして」って言った。
Mがぎゅっと抱きしめて、キスしてくれた。
あたしは、いっぱいの力をこめて、Mを抱きかえした。
Yシャツに染み付いた香水の匂いに、
一瞬、胸がきゅ、ってなった。
「次は、俺がそっちへ行く番だな」
「ホントに?」
あたしは笑う。
「無理しなくていいよー」
「無理じゃないよ。日帰りでも行くよ」
「待ってる」
そんなこと、あたしは言わない。
ただ、ほんのちょっぴり笑って、Mの肩におでこをくっつけた。
エレベーターの中で、手をつないだ。
今日は、ばいばいのキスはしないって決めてた。
来ない人を待つ、なんて事になったら嫌だとか、
ネガティブなことを考えてたから。
電車に乗っていたら、Mからのメール。
10分くらい遅れる、という。
あたしは、駅で待ってるのがなんとなく不安で、
町をふらふらしながら、連絡が来るのを待った。
暫くして、携帯がなった。
Mからだった。
どきりとしながら、駅に戻った。
改札近くにMの姿を見つけて、やっと約束が嘘じゃなかったんだ、って思った。
「ひさしぶり」って言われて、あたしはちょっとぎこちない返事をした。
あたしは、初めて会った時みたいに緊張してた。
「なんか、緊張するね」
あたしが言うと、Mは「そうかなぁ」って笑った。
「なんでだろう。あたし、けっこう緊張してるんだよ。
久しぶりだからかなぁ」
「そうだなぁ。一体何ヶ月ぶりだろ?」
「半年近く?」
「5ヶ月くらいか」
「長いね。過ぎるのははやかったけど」
Mは、ふとあたしの横髪を耳にかけた。
「なに?」
「yuco、ちょっと変わった?」
「そう? どの辺が?」
「いや、よくわからないけど。髪形のせいかなぁ」
「化粧のせいとか?」
「うーん」
結局、何処が変わって見えたのかわからなかったけれど、
たぶん、本当に東京にいた頃のあたしとは変わってるんだろうな、と思った。
Mの知らないところで、いろいろあったんだもん。
当たり前じゃん。
「Mさんは変わってないねぇ」
「そうだなぁ」
いつものように一緒にご飯をたべて。
いつものようにたくさん話をしているうちに、少しずつ緊張は解けていった。
けれど、ホテルに移動して、部屋に入ると、
また緊張がじわじわと押し寄せてきた。
初めて会ったときにそうだったように、
あたしは内装を見るフリをして立っていた。
ほんの少し鼓動が早くなって、指先がひんやりとしてぎこちなくなった。
Mに手をひかれてベッドに座った。
抱き寄せられて唇を重ねた。
よく知った香水の匂いと、ほんの少しの煙草の匂い。
変わってない。
Mの舌が入ってきたとき、あたしは思わずMのYシャツをぎゅうって掴んだ。
「緊張してるね」Mが言った。
「だって・・・」
「『だって』?」
あたしは、本当にこうやってMと会うだなんて思ってなかった。
約束したんだから当たり前だけど、
約束が実現するっていうことを、どこか非現実的なことみたいに思ってた。
『先』なんてあり得ないから。
ぷっつりとどこかで途絶えてしまっても、何の不思議もない関係だから。
なのに。
半年近く経ってキミに再会して。
ワルイコトって知ってるのに、また身体を重ねてる。
陶酔だか何だかわからないけれど、
キミの肌の熱さとか、腕のかたさとか、香水の匂いとか。。。
いろんなことを愛しいと思ってるあたしがいる。
ベッドに倒れこんで、Mがあたしの喉や胸元にたくさんキスをする。
髪をかきあげて、あたしの顔を覗き込む。
あたしは恥ずかしくて目をそらす。
「やっぱり、yucoはyucoのままだね」
って、頬を撫でて、額にキスした。
あたしはあたし。
だけど、始めにMが言ったように、半年前からは少し変わったんだと思う。
色んなことがあり過ぎたから。
Mの知らないところで、あたしはいっぱい泣いた。
自分自身を傷つけたりもした。
Mの知らない人と寝たりもした。
それが虚しくて、また泣いてた。
悲しい顔を見せるのは、Mじゃなかった。
あたしたちは、そーいう関係じゃないから。
その日、Mはたくさんキスをしてくれた。
唇を重ねるだけじゃなくて、
乳房を吸うだけじゃなくて、
おでこや、頬や、喉や、指に。
Mのぬくもりを感じたくて、あたしがMの胸に頬をつけてくっつくと、
こどもにするみたいに、頭をくしゅ、って撫でてくれた。
胸にくっついたまま、Mを見上げると、
前と同じように「ん?」って言って、あたしを見た。
そして、そのたびにキスをした。
抱きしめられて、抱かれて、
身体のいちばん奥に、強く触れられて。
息が切れるほどに、激しくて。
冷えてた指も、いつしか熱くなってた。
「そろそろ、出る時間だね」
Mが気づく。
「えー」って、あたしは冗談めかして言う。
離れたくない、って心から思っても、
そんなことは絶対に言わない。
部屋を出る前に「ぎゅ、ってして」って言った。
Mがぎゅっと抱きしめて、キスしてくれた。
あたしは、いっぱいの力をこめて、Mを抱きかえした。
Yシャツに染み付いた香水の匂いに、
一瞬、胸がきゅ、ってなった。
「次は、俺がそっちへ行く番だな」
「ホントに?」
あたしは笑う。
「無理しなくていいよー」
「無理じゃないよ。日帰りでも行くよ」
「待ってる」
そんなこと、あたしは言わない。
ただ、ほんのちょっぴり笑って、Mの肩におでこをくっつけた。
エレベーターの中で、手をつないだ。
今日は、ばいばいのキスはしないって決めてた。
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