静かに離れるこころ

2005年1月27日
手をつないで歩きながら。
食事をしながら。

肌をくっつけて横になりながら。

ぎゅっと抱き合ったり、
キスしたり、
ウトウトしたりしながら。

一緒にいるとき、私はMとたくさん話をする。

他愛の無い話も、真面目な話も、Mはちゃんと聞いて答えてくれる。
ちゃんと「自分」を持ってる。
私がMのことを「オトナだな」って思う瞬間。

「俺はyucoのこと、好きだよ。こんなこと言っちゃいけないんだろうけど」
「好き、にも色々あるでしょ」
「一人の女性として好きだよ。お互いに相手がいなかったら、付き合ってた。
そういう『好き』だよ」
「……」
「今は、yucoを彼氏に借りてるって感じだもんなあ」

借りものだから、大事にされてるのね。
そんな皮肉が浮かぶ。

「yucoにとって、俺はどうなの?」
「どうって?」
「暇潰しの相手なら、それでも良いし」
「暇潰しじゃないよ」

即答した。でも、その先の言葉はゆっくり選んだ。

「Mのことは嫌いじゃない。
えっちしてることを除けば、すごく良いトモダチだと思う。
でも、実際はこうやって一緒にいて……。
こういう関係をどう言い表して良いのかわからないよ」
「うーん、難しいな。でも、嫌われてはないわけか」

「嫌いじゃないよ」

でも、もしも本当に好きになったら、
最後に泣くのは自分だってわかってる。
Mには奥様がいて、最後には必ず奥様のところへ戻るってわかってるから、
絶対に好きにはならない。

近づき過ぎないように。
愛さないように。

傷つかないように。
 
 
ふと訊かれた。

「彼氏とはうまくいってる?」

私はどきりとする。胸がぎゅうっとなる。

「わからない。
彼氏は好きだって言ってくれる。私も彼氏のことは好きだと思う。
でも、うまくいってないと思う」

彼は良い人。
甘えたり、我侭言ったりできる、唯一の人。
抱きしめられれば嬉しい。一緒に遊ぶのも楽しい。

でも、うまくいかない。

何が変わってしまったのかわからない。
 
 
ただ、
彼とのセックスで、私は濡れなくなった。感じない。痛い。
 
 
ひどくショックで、すごく悩んだ。
 
心が離れているのかもしれない。
そう自覚した瞬間だった。

求められれば、受け入れてあげたい。
そう思うのに、身体が反応しない。
Mともセックスできてなかったら、
私は自分の身体がおかしくなったと思っただろう。

彼が、友達であればよかったのに。
それなら、心地良い関係を続けられたかもしれないのに。

離れたいわけじゃないのに。
大事な人であることに変わりはないのに。
 
嫌いになったわけでもないのに、終わってしまう恋愛。

そういうものもあるのだろうか。
 
 
「あるかもしれないね」Mは言う。
「でも、彼氏は悪くないのに。悪いことしてるのは私のほうなのに」

苦しいくらいに抱きしめられた。

「『悪いこと』だなんて言わない」
「でも、悪いことだもん……」
 
 
彼とMと。
この先どうなっているのか。

私にはちっとも見えない。

けれどもうすぐ大学を卒業して、社会人になって。
きっと環境は一変する。
私自身も変わっていく。

今のまま、はありえない。
多分、何もかもが。

ほんの数ヵ月後には、私は誰とも一緒にいないかもしれない。

「もし、今みたいに会えなくなっても、何年後でも、またyucoに会いたいと思うよ」

キザなセリフ。
本当にそんなこと思ってるの?

頭で疑い、言葉ではぐらかす。
そして、身体では求めてる。

嘘でもいい。
誰よりもそばにいて欲しい。

今、この瞬間は、そう思うだけ。

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