静かすぎるケンカ

2004年12月24日
はっきりとしたきっかけなんてなかったと思う。

ただ、気づけはお互いに黙ったまま向かい合って座っていた。
 
 
ほんの1時間前までは笑いあってた。
その頬には、もう笑顔のかけらもなくて。

何度も「大好きだよ」と言っていた口からも、
もう何の言葉も出てこない。
 
 
「今日はもう帰る」

どちらともなく言った。

駅前で、じっと向かい合った。
でも、やっぱり二人とも黙ったままで。
 
 
悲しかったし、寂しかった。辛かった。

でも、彼の顔には、何の表情もなかった。
私の顔には、何の感情も浮かばなかった。

ただ、冷たかった。すごく冷たかった。
 
 
「……じゃあね」

突然彼は踵を返して行ってしまった。
 
 
何か言いたかった。
「ごめん」でも「待って」でも良かった。
責める言葉ですら良かった。

でも、何も言えなかった。
唇を噛むことしかできなかった。
ぎゅっとかみしめて立ち尽くすことしかできなかった。

私は馬鹿だ。

逃げるようにして家に帰った。

ついさっきまで彼と一緒に「きれいだね」と言ってたクリスマスの装飾。
ツリーもケーキもリースもクリスマスソングも、全部見たくなかった。
 
背をまるめ、身を縮めて街中を突っ切った。
 
 
息が苦しかった。
飲み込もうとする涙と、吐き出したかった言葉が、
喉でぶつかって詰まっていた。
 
 
これが、あなたとの初めてのけんか?

だとしたら、静かすぎるよ。

あまりにも静かすぎるよ。
 
 
 
 
家に戻り、心が硬直したまま、しばらくの間ぼんやりとしていた。

しばらくして、何も考えないままパソコンを立ち上げた。

Mからメールが来ていた。
 
 
 
私が彼に怒りをぶつける権利なんてない。
わがままを言ったり、彼を責める権利なんてない。

でも、静かなけんかなんて、あまりにも哀しすぎる。

言葉をじっと飲み込んでいたのは、私だけじゃない。

あなたもだったんだね。

私たちは今まで、何も話せてなかったんだね。

少しも分かり合えてなかったの?
通じ合ってなかったの?

お腹に溜め込んだ気持ちも知らずに、うわべだけ見てたの?
 
 
 
 
 
携帯が鳴った。

彼からのメール。

「ごめん」の言葉。
 
 
 
 
涙が溢れた。

次から次へとこぼれて、流れた。
声を出して子供みたいに泣きじゃくった。
顔が熱くなって目が痛くて鼻がつんとした。
 
  
私は、こんなに悲しかったんだ。

泣き出してから、初めて気づいた。
 
 
彼と離れることが、こんなにも辛かったんだ。
 
 
あなたもきっと、同じなんだよね?
 
 
 
 
 
返したい言葉は山ほどある。
ぶつけたい気持ちも山ほどある。
 
でも、どんな言葉を並べても足りない。
 
 
 
 
何という言葉を返せば良いのだろう。

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